ひこばえ
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そぞろ寒

そぞろ寒ただ寝るだけの宿に入る



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当日、早目にホテルに着くように出掛けたが、東名高速の入り口でトラックの横転事故があり1時間以上も渋滞に嵌まってしまった。早く着いて小田原城を見に行きたかったのである。しかし、時刻は4時半になっていた。カーナビに案内されて目的地に到着したが、オレンジホテルなる建物が見当たらない。路上に車を停めて外に出て探してみた。ビルの中の3、4、5階の部分だけがホテルだということが分かる(写真)。会長の言う「小田原で一番豪華」という意味が分かった。駐車場に車を入れて「ホテルフロント」と書かれた3階に上がっていった。薄暗い建物のエレベーターを降りたすぐ横にフロントがあった。
私「スミマセン、どなたかいらっしゃいますか?」
声を掛けると奥から若い女性が出てきた。
私「予約していると思うんですが、日向と申します」
女性「はい、伺っております。代金がまだなのですが、頂いてよろしいでしょうか?」
私「えっ?代金は倫理法人会の方で支払うことになっていると思うんですが……」
女性「そうですよねぇ、いつもは頂いているんですが、今日はまだ頂いておりません」
私「そう?それじゃ、問い合わせてくださいよ。きっと、会で支払うはずですから」
女性「分かりました。それでは少しお待ちいただけますか?係があと10分ほどで参りますので、それまでソファでお待ちいただいてよろしいですか?」
エレベーターの目の前にあるソファを指して言う。私も講師を行なうようになってから2年ほど経つが、こういう造りのホテルは初めてである。建物の一部だけがホテルである。ホテルがテナントで入っているのだろうか。他の階をテナントで貸しているのだろうか。どういう部屋なのだろう。風呂は付いているのだろうか。少し不安になってきた。
しばらくして係という男性が現れた。年は78才。コンチネンタルホテルで会った会長より5才上とのことだったので、そういう計算になる。
男性「代金はいいですよ。こっちで連絡しておきますから。〇〇さんもウッカリしているからなぁ(笑)」
〇〇さんと私は面識がないのだが、当然知っているものとして話している。会長の話にもなった。聞くと凄い人である。手広く事業を行なっていて小田原の名士のようである。
男性「あの人がここの法人会を作ったようなもんですよ。顔が広いので一挙に人を集めてみんな会員にしてしまった。勢いがあったなぁ。俺も古いからね、そのあたりのことは全部知っている(笑)」
翌朝のモーニングセミナーの会場の場所を教えてくれたり、駐車場のことを説明してくれたりして部屋のキーを渡された。どんな部屋だろうと危ぶんだが、入ってみると普通の部屋だった。しばらくして夕食に外に出たが、向かいがすぐ「万葉の湯」という立派なビルである。他で軽くビールなど飲んで食事をし、再び「万葉の湯」の前に立ったが入るのも面倒になり部屋の風呂に入って休むことにした。本を読みながら寝てしまった。
                                 (平成29年作)

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屏風

祝宴の舞台へ屏風運ばるる



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知人の会社の創立記念パーティーに招かれた。場所は横浜コンチネンタルホテルである。300名程を集めて、歌あり踊りありの豪勢な祝賀会だった。丸テーブルで私の隣に座ったのが小田原で会社を経営している会長さんである。今は弟さんに社長を譲って悠々自適といったところだが、年の割には元気でまだまだ引っ込んでいるような様子はない。年齢は73才と聞いた。
私「今日は小田原からですか。遠くからご苦労様です」
会長「えっ、小田原が遠い?全然、遠くないよ。新幹線で15分だよ。いやだねぇ、こういう人は。神奈川県から出たこと、ないんじゃないの?(笑)」
名刺交換した時の一言である。妙に人なつこい、親近感を覚えさせる人物である。
私「あれっ、小田原って神奈川県でしたっけ?たしか、静岡県でしたよね(笑)」
会長「まいった、まいった。上手がいるなぁ。一本取られたなぁ(笑)」
私「大体、名刺に神奈川県小田原市と書かなければいけないところが遠い感じがするんですよ。私の名刺は横浜市から始まっていますよね。神奈川県横浜市と書く必要がない(笑)」
会長「おっ、そうだな。そう言われればそうだ。なるほど……」
私「来週、小田原にお邪魔します」
会長「おっ、仕事で?」
私「いえいえ、倫理法人会です」
会長「ああ、倫理の人か。このテーブルはみんな倫理なんだ(笑)。俺もかれこれ35年もやって来たよ。お陰で会社は大きくなったし、潰さないで来られた。しかし、さすがに疲れたよ、朝が早いからなぁ(笑)」
私「35年とは凄いですね。草創期からですね」
会長「そう、今は弟に任せて出ていないけど(笑)……。何をしに小田原に来るの?」
私「講師です」
会長「おお、そうか。そりゃあ、聞きに行かなきゃまずいな(笑)」
私「いえいえ、大丈夫ですよ。会長さんのような凄い人生を歩いてきた訳ではないですから、大した話じゃないですよ(笑)」
会長「ホテルはどこに泊まるの?」
私「オレンジホテルと聞いています」
会長「おお、小田原で一番豪華なホテルだよ。このコンチネンタルほどではないけどなぁ……(笑)」
豪快肌の人である。しかもよく笑う。笑顔が素晴らしい。約3時間の祝賀会もその会長さんのお陰でとても楽しく過ごすことが出来た。感謝、感謝である。
                                 (平成29年作)

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添水

ダヴィンチの手になる添水かと思ふ



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模型はとても素晴らしいものだった。ダヴィンチが実際に作ったかどうかは分からないが、時代を先取りしたその発想力と実現性、緻密さ、こだわり、そして何と言ってもあらゆる分野にまたがる多才ぶりには驚かされたものである。
歯車があり、滑車があり、関節の動くロボットやトレーニングマシーンまである。組み立て式の橋などは実用的にも見える。変速ギアがあり、ボールベアリング装置があり、バネで動く自動車もある。ライト兄弟が人類初の飛行機を飛ばしたのは1903年だが、その400年も前に羽ばたき飛行機やグライダー、ヘリコプター、落下傘を設計している。戦車や艦載砲など軍事用のものも多い。写真の馬車には敵の馬を近づけないための回転刃が付けられている。水に係わる物もいくつかあり、水力のこぎり、潜水装置、水上歩行器、ボート、救命浮き袋、水を上に誘導する装置などがあり、日本の「添水」などは訳もなく作ったに違いないと思ったものである。一人の人間がここまで考えられるものだろうかと驚くしかない。まさに天才の仕業である。
模型を飾ったブースのあとにはその手稿が展示されていた。これまた膨大な量である。ここは撮影不可なので見入るしかなかったが、人体図や解剖図などのデッサンは見事なものである。実際に解剖した上でのデッサンであろう。今の人間が描いたのではないだろうかと思うほどに精緻なものであった。
出口の近くにテレビが置かれ、ダヴィンチについてのビデオが流されていた。パイプ椅子に腰を掛け20分ほど見ていたが、いかに創造的で天才的な人であったかを教えてくれていた。1時間もいただろうか、とてもいい時間を過ごした。やはり、芸術に触れるというのは素晴らしいものである。無聊を決め込んでいてはいけない。外に出ようと思った。

ダヴィンチの残した言葉に次のようなものがある。今の私を見透かしたような一言である。
「時々、機会を見つけて外出しなさい。
そして、リラックスしよう。
外から帰ってくると、
あなたの判断はより確かなものになります。
いつも仕事にへばりついていると、
あなたは、判断力を失ってしまいます」
                                 (平成29年作)

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美術の秋

ダヴィンチに触れて美術の秋と知る



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そごう美術館で「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」が開催されていた。期間中、何度も行こうとしたのだが、なぜかタイミングが合わず期間終了間際になってしまった。没後500年記念だという。副題が「天才の『手』から生まれた未来への夢」である。モナリザの製作過程でも見せるのだろうかと、よく調べもせずに出掛けたのだった。
昔、フランスのルーブル美術館で本物の「モナリザ」を見たことがあった。その時の印象は「小さい!」である。広い館内をガイドの後ろに付いて歩きながら、ミロのヴィーナスやニケなどの説明を受け、途轍もなく大きな油絵を何十枚も見た後にようやくその前に到達した時、疲れていたこともあったのだろうが「えぇ~、モナリザってこれっ?」という感じを受けたのだった。意外にも作品の近くまで寄ることが出来、ギリギリまで近づいて見て、その時の一声が「随分と小さいなぁ」である。

デパートのエスカレータで6階フロアに着き、目の前に並べられている安楽椅子の展示販売の脇を通るとエントランスが見えてくる(写真)。いつもこの展示のセンスの良さを思う。「これから芸術作品に触れるぞ」と期待感が高まる一瞬である。コインロッカーに荷物を預け、入場料を支払い、パンフレットを受け取る。
入ってすぐの場所に説明書きがあった。
「〈最後の晩餐〉や〈モナリザ〉の画家として知られているレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)は名画の他に、膨大な量の手書きのメモ(手稿)を遺しました。数十年にわたって書き綴ったその手稿には、機械工学、航空力学、天文学、幾何学、建築、解剖学、自然科学など広範囲にわたる研究がデッサンとともに鏡文字で記されています」
その手稿をもとに模型を作って展示されているというのである。振り返ると何やら木で出来た作品が並べられている。なるほど、ようやく「手」の意味が分かった。手稿の「手」のようである。
場内の照明は少し暗めだった。数人のお客がいて見入っている。「さぁ、見よう」と思った瞬間、突然フラッシュが光った。
「えっ!まずいでしょ」
写真は駄目なはずである。ましてフラッシュなんてと思ったが、あちこちで写真を撮っているのが見えた。
「あれっ、いいのだろうか?」
見ると説明が書かれていて、触れて良い物、悪い物、撮影可の場所などについて書かれている。模型の撮影は許されているようである。ダヴィンチの作品でなく、誰かの製作物だからということだろう。意外な展開になったと思った。
美術館に入って撮影した記憶がない。それならばブログ用に面白そうな物を見つけようと少し目的が変わってしまったようである。そんな楽しみ方があってもよいと思った。
                                 (平成29年作)

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秋雨

秋雨や人のまばらな書道展



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10月12日(木)から17日(火)まで桜木町のゴールデン文具のギャラリーで群星会の書道展が開かれた(写真)。塾生は当番制で会場に出ることになっている。平日の当番は無理なので、私は祝賀会がある土曜日の午後に顔を出した。知った顔に挨拶してから作品を観て回った。もちろん自分の作品を確認してからである。受付に戻ると話が始まった。私と同じ時間帯に習いに来ている書道歴4年目の37才の男性S君と、顔は知っているがあまり話したことのない私より少し年上の女性Fさんである。
Fさん「日向さんの字は力強いですよね。会場に入ってすぐに目に留まります」
私「そんなことないですよ。始めたばかりですから、まだまだですよ」
S君「いや、本当にいいですよ。上手いですよ」
私「S君には敵いませんよ。何と言ったって柱ですから」
S君「柱?」
私「そう、私は衝立(ついたて)ですから(笑)」
Fさん「何ですか、柱とか衝立とかって?」
私「基本的に作品は壁に飾られますよね。先生の作品なんかは壁の中でも一番奥の床の間のような場所に飾られます。飾る場所には意味があるんですよ。実力者の作品はみんな壁です。見てください、壁に飾られた作品の素晴らしさを。そこに貼り切れなかった作品は次に柱になります。S君の作品は入口に一番近い柱ですから、柱の中でも申し分なしの良い場所です。それに比べ、私の作品は休憩所の入口を隠すための衝立です。凭(もた)れれば倒れてしまう衝立だから危なくてしょうがない(笑)」
Fさん「考え過ぎですよ。そんなことありませんよ。それにしても面白いことを考えるものですねぇ、驚きました(笑)」
当日、雨模様なので来客が多い訳ではない。それをいいことに3人で笑いっぱなしである。
私「来年の目標は壁です」
S君「えっ、柱でなくていきなり壁ですか!」
私「目標は高い方がいい。柱に飾られている作品をよく見てください。どの作品も小品です。文字数の少ないものばかりです。20文字あれば間違いなく壁です。来年は20文字に挑戦します。S君も20文字で行きましょう。7文字も20文字も大した違いはない(笑)」
S君「凄い!」
そのあとで大笑いしていたFさんの作品を見て驚いたものである。先生のすぐ近くに飾られていたのである。文字数40字。見事な作品である。よく知らないで冗談ばかり言っていたが、書道歴25年の大ベテランだったのである。Fさんに失礼の段を詫びたことは勿論であるが、却って気に入られたようである。祝賀会の丸テーブルでは私の隣に座り、その横にお仲間を座らせて全員を紹介してくれたものである。お陰で楽しく盛り上がり、我々のテーブルから笑い声が途切れることはなかった。
                                 (平成29年作)

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