ひこばえ
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あっぱっぱ

ペディキュアは女子の嗜みあつぱつぱ



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翌朝は早起きしてハロンの町を歩いてみた。6時ともなると町は動き出している。昨日のマッサージ屋の前を通るととても派手な看板を立てていて周囲と少しそぐわない建物であることが分かる。少し行ったところに店屋があり、オートバイを停めて何かを買っている人がいる。何かなぁと思って見てみるとパンを売っているようである。「買ってみるか」と思った。手帳を取り出し、それが「バインミー」であることを確認する。「第8位、サンドイッチ、朝食の定番メニュー、いろいろな具材を挟む」と書かれている。お客が2人いて私が外から勝手に写真を撮るものだから、慌てて出て行ったようにも見えた。誰もいなくなって店のおばちゃんが「どうするの?」と言いたげな顔で見ている。パンを指さし、人差し指を立てる。「一つください」の意味である。おばちゃん、少し笑顔になる。パンを一つ取り出しオーブンに入れ、フライパンに油を引き始めた。「ハングル?」と聞いてくる。「ノーノー、ジャパン」と答える。「???」分からないらしい。「トウキョウ」「オー」ようやく理解してくれた。理解すなわち笑顔である。器に卵を割り、掻き混ぜ始める。卵を少しフライパンに垂らし、火加減を見ているところは日本と同じである。流し込む。火を調節している。私の方を見て側にある椅子を指さし座れという。例のプラスチック製のやつである。初座りである。卵をひっくり返し折りたたみ、手際よくパンに挟み込んだ。その上に野菜を載せている。豚肉のようなものも挟んだ。掛けるタレを聞いてきた。ケチャップのようなものと、ドレッシングのようなものがある。ケチャップの方を指さした時、おばちゃんは笑った。なぜ笑うのだろう、意味が分からない。パンは一応出来上がったようだ。その時、おばちゃんが立ち上がり私を奥の方に連れて行こうとする。「???」なんだろう。奥に牛乳などが入ったガラス製のケースがあるのだ。そこに連れて行こうとしている。立ち上がって近づくと、ケースを開けて黄色い瓶を取り出した。これも一緒に買えと言っているのだろう。「オッケー」それはすぐに通じた。おばちゃん、ニコニコである。入り口に戻り、黄色い瓶とパンを持って横のテーブルに目線をやっている。ここで食べていくかと聞いているのだろう。「ノーノー」と右手を振る。すぐに理解したらしい。すぐにビニール袋を用意し、詰め込んでくれた。支払いである。ポケットから財布を出しドンを取り出した。いくらだか分からないのでおばちゃんにそのまま差し出すと、その中の一枚を取り出して自分のポケットからお札を出してお釣りをくれた。「カムオン」私がお礼を言うと「カムオン」とおばちゃん。店を出て振り向くと、右手を挙げて挨拶をしてくれた。ホテルに帰って確認すると黄色い飲み物はコーンスープのようなものであった。とても甘い飲み物だった。
                                 (平成29年作)

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素足

素足出す美女の素足のかたはらに



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ハロン湾のホテルに到着する手前のバスの中でフットマッサージに行くかどうかとハンさんに聞かれた。行くと答えたが、妻は行かないという。
「えっ、どうしたの?」
「いいの、あなただけで行ってきて」
珍しいこともあるものだと思ったが行きたくないというのだから仕方ない。Tさんは行くという。もちろん先生は行くわけがない。チェックインのあとすぐにロビーで待ち合わせ、バスでマッサージ屋まで連れて行ってもらった。1時間20ドル。女性がいいか男性がいいかと聞くので、もちろん女性をお願いした。部屋は3階にあり階段を上がった。ベッドが4台並んでいて案内が出て行ったのでTさんと二人で取り残されたようになった。このTさん、年の頃40代前半のようだが、上場会社の役員をしている。3年程前に前職に在職中にヘッドハンティングされ入社し、すぐに役員に抜擢されたという。バリバリのキャリアウーマンなのである。旦那さんはアメリカに単身赴任中で子供はいない。社長直結のポジションにいるらしく休みをもらっての旅行だという。仕事とプライベートをきちんと分けているらしくあまり多くを語らないが、ポツリポツリと話す言葉に凄い人であることが伝わってくる。「プレイングマネージャーのプレイングの方にウェイトを置きすぎていて、もう少しやりようを工夫しようと考えているところです」などと言っている。
しばらくして女性が2名入ってきた。大きなバケツを持ってきた。椅子になっている箱の蓋を開け、その中に所持品を入れろという。言葉は通じないが身振りで全て分かるのである。バケツの中には真っ黒いお湯が入っていて足を浸けてそこに座れという。私の後ろに回って肩を揉み始めた。
Tさんはというと、まずはジーパンを穿いているのが駄目だという。フットマッサージなので当然である。店に用意されたショートパンツがあるので、ここで着替えろと言われている。
「えっ、ここで?無理無理、この人とは他人だよ」と日本語で言っている。相当に慌てている。相手に全く通じていないのが私にも分かる。「他の部屋はないの?廊下でもいいよ」と更に言っている。担当の女性には通じない。バスタオルを持ち出して隠しておくのでこの場所で脱げと言っている。「もう、いい加減だなぁ」観念したらしい。赤い布を持つ闘牛士のような形にタオルを広げさせジーパンを脱いだようである。「大丈夫、大丈夫、見ていないから(笑)」とフォローするのが精一杯である。
肩、背中、腰と揉んでいき、仰向けに寝て足を擦り始める。気持ちいい。足裏など最高である。Tさんとほぼ同じことをしているらしく、「痛い、痛い、もう少し優しくやってよォ」と言っている部位が背中の辺りであり、足裏であることが分かる。美人の隣で痛がっている声を聞きながらマッサージを受けるのは妙に艶めかしいものである。90分コースでも良かったかなぁと思ったものである。
                                 (平成29年作)

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早桃

南国や伏目勝ちなる早桃売り



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翌朝も早く起き出してホテルの周りを歩きフォーを食べさせてくれる店に入ってみたりした。10時と少し遅めの時間にバスが迎えに来て、ホーチミン廟や一柱寺などの観光地を見て回った。昼もベトナム料理である。ハノイばかりでなくサイゴンビールなども飲んでみた。4人の会話もおよそ慣れてきて、先生を除く3人で普通に盛り上がりを見せてきた。
昼食後は4時間掛けてハロン湾に移動である。一杯飲んだ後なのでグッスリと眠ると思っていたが一向に眠くならない。あれこれとハンさんと話しながらベトナムの知識を蓄えていく。
「ベトナムの米作はタイに続く第2位となっています。主要産業です。年2回作っていますが3回作っている所もあります。コーヒーは輸出量世界1位です。」
「えっ、コーヒーはブラジルでしょ」
「いえいえ、お父さん、違いますよ。ベトナムが1位になっています。今とても力を入れています。設備投資をしたり、技術改良したりしてブラジルを抜きました」
ハンさんの国を思う気持ちは半端ではない。
「今、ベトナムには地下鉄がありません。だからバイクに乗るのです。しかし2030年に地下鉄が走ります。地下鉄が出来たらバイクは減ります。大きく環境が変わり国はますます成長します」
道端に何か果物を売っているのが見えた。
「あれは何ですか?」
「桃です。あの桃は食べてはいけません。全部、中国産です。あの桃は2、3ヶ月腐りません。炎天下の道端で売っていても、いつまでも色は変わりません。とても綺麗に見えますが恐ろしい食べ物です。凄い農薬や防腐剤、化学肥料を使って作っていますので、食べて10年もしたら確実にガンになります。中国産は恐ろしい。何でもお金になればいいと考える人達です」
「ヒエー、桃は不老長寿の食べ物のはずですが……」
「桃が全部ダメな訳ではありません。ベトナムの桃は小さいけれど安心して食べられて、とても美味しい」
写真はその翌日、また同じ道を帰って来た時にわざわざ車を停めてもらって写したものである。こちらを見ている男性が身動きもせずにいるのが少し不気味に思えた。
                                 (平成29年作)

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ビールの酔

噛み合はぬ思ひ飲み干すビールの酔



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さて、その日の夕食である。昼を食べたばかりなのにと思うほどに時間が早い。今回のツアーのテーマが「ベトナム料理と世界遺産を楽しむ旅」である。今度は4人掛けのテーブルに4人である。ぐっと距離が縮まった。ベトナムフレンチというので最初に出てきたのが写真のサラダである。私は変わらずのハノイビールで妻も女性も昼と同じものを注文していた。違うのは男性で椰子の実ジュースからハノイビールに変わった。
「あれっ、飲めるんだ!」
昼間の轍は踏むまいと全員に飲み物が届いた瞬間に乾杯をさせてもらった。それぞれの名前はさすがにバスの中で確認している。男性がHさんで、女性がTさんである。しばらくしてからHさんに質問をしてみた。
「失礼ですがご職業は何をされているのですか?」
「日本語教師です」
「えっ!先生ですか。日本語を教えるということは生徒さんは外人ですか?」
「そうです」
相変わらず先生の物言いは短い。(この時点から全員、Hさんを先生と呼び始めている)
「どこの国の人を教えているのですか?」
「いろいろです」
「たとえば?」
「中国、韓国、東南アジア、インド」
「凄いですね。先生は英語で教えるのですか?」
「日本語しか使いません」
「へぇ、教えづらいこともあるでしょうね」
「ほとんど問題はありません」
一挙に距離が縮まった気がしたが、それが勘違いであったことにすぐに気付かされた。それからの会話に全く入ってこないのである。何かを勧めた時のことである。「どうぞ、お構いなく」とピシャリとやられた。食事が喉に詰まるような気がした。フムフム、なるほど、そういうことか。相手がそういうことであればこちらもそうしなければならない。何となく分かり始めて来た。先生はその時から私の眼中から消えた。そういう人もいるのである。
その食事の場で先生よりもっと驚かされることになったのがTさんの方である。とても美人でとても聡明な話し方をする人ではあるが、それ以上に凄かったのはその経歴である。
「ええ~!スゴ~イ!凄すぎるジャン!」
                                 (平成29年作)

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夏負け

ベトナムを描きて夏負けとも見ゆる



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クルーズを終え、来た道を2時間掛けてまたハノイへと戻った。長い移動距離である。本を読むことも出来ずウトウトとするばかり。ハイさんもウトウトしているようなので話し掛けることも憚れる。車の運転を見ていると本当に荒っぽい。隙あらば追い越そう追い越そうとしている。日本では考えられないチェイサーゲームである。
市内に入り、まずは地元スーパーの見学である。なぜか予定に入っている。普通のスーパーマーケットで、必要なものがあれば買い物をしてくださいという。中を見ると日本のスーパーと何ら変わりがない。地元の人が普通に買い物カゴを提げて買い物している。なんでここがコースに組み込まれたのだろう。よく分からないまま何も買わずに出てきた。夕食まで時間があるので1時間ほどのフリータイムとなった。お土産でも見て回ることにして旧市街という雑踏の中を歩いてみた。いろいろな物が売られているが一つとして欲しい物がない。ほとんど物欲のない私なのである。その私が一つだけ足を止めた場所があった。油絵である(写真)。5坪位の狭い店に目一杯の絵を並べ、奥まった場所で男性が絵を描いていた。本当に描いているようである。男性が振り向かないので勝手に店内を見ていたが、店先に飾られた一枚の絵に釘付けとなった。一瞬で心奪われた。いい絵だなぁ。これを買って日本に持ち帰ることは出来るのだろうか。大きさも10号位なので丁度いい。いくらするのだろう。聞いてみようかな。
「これ、どう?良くない?」と妻に聞いてみた。
「買ってどうするの?自分で飾るの?お土産にしようなんて考えているんじゃないでしょうね。止めなさいよ。もらった人は迷惑なんだから」
結構きつい言い方である。昨年出掛けたイタリアで私が選んだお土産のことを言っているのである。自分の趣味で良かれと思って選んだベネチアのお面だが、誰からも賛同されることなく非難を浴びるだけの結果となってしまい、今回もまた同じ轍を踏むのではないかと反対しているのである。男性が振り向いて寄ってこようとしたが、時間がないので写真だけを撮って店を後にした。戻ってからハイさんに聞いてみた。
「油絵ですか。買った人を見たことありません。普通買うのは刺繍です。刺繍なら丸めて持ち帰れますので日本人に人気です。是非、刺繍をお勧めします。油絵はよくありません」
「ほらね」という顔の妻である。
その夜、ホテルに戻ってからスマホで調べてみた。「ハノイで油絵を買う」で検索してみるといくつかヒットするものがあった。「なるほど、なるほど」大丈夫そうである。写してきた画像を眺めながら買う決心を固めていった。いくらもしないだろう。5,000円位と目星を付けた。これを買わずに帰ったのでは後悔するかも知れないとまで思い始めていた。最終日にまた同じ場所に立ち寄ることになっている。妻が反対しても、ここは買うことにしよう。急に嬉しくなってきた。今回のベトナム旅行の思い出の品が手に入るのだから。
                                 (平成29年作)

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