2020年05月の記事 - ひこばえ
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Author:日向 亮司
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ひこばえ


2020年05月の記事

山桜

山ざくら伊豆の旅籠の二階より



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平成7年4月12日(水)「教祖」
2日目は主役が替わる。旅行2日目に何かが起こるという悪いパターンは今回も繰り返された。早目に宿を出て、松崎のなまこ壁、長八記念館、波勝崎の野猿苑と見て回り、2日目のメイン「一条竹の子村」に到着した。予想以上の人出で、着くや否やゴム長靴を履かされ、マイクロバスで竹藪まで案内された。今年は竹の子の成長が悪い上、イノシシが荒らしてしまったとかで、通常1000円の入場料はなく掘った分だけ目方売りするという。係員に探し方や掘り方を教わってすぐにスタートした。運よく一つ見つけた。感動である。鍬を振り上げ、初体験の一個を手にする。その後あちこちと探して回ったが結局は見付からず、最初の一個だけとなる。みんなも一つは手にしたようだが好川さんだけは最後まで見つけられなかったようである。マイクロに乗り込む時もブツブツ言っていたが、今思えばあの時がその日の悪夢の出発点だったかも知れない。竹の子定食に竹の子の刺身を注文すると、彼は迷わずビール3本を注文した。車の中にダイエー100円ビールがワンサカとあるのに、そこで飲まずにいられなかった竹の子一個の怨み。1日目の出発以来、車中での話題は専らオウム真理教(写真)。新聞の一面を連日賑わしている渦中の事件であるだけに話は面白い。そのオウムを参考に自分も新興宗教を作ると言い出した好川さんの教団の名前は「ライク・リバー教」。ライクが「好」でリバーが「川」である。
これには大いに笑わせてもらった。本人も相当に気に入っていたようで執拗にその名を連呼していた。まさにライク・リバー教教祖誕生を広く印象づけようとした彼の戦術だったかも知れない。
竹の子村を出発し一路帰路に着くと、すぐに渋滞に嵌まってしまった。教祖たるべき好川さんが徐々に変貌し、狂祖の様相を呈していくのは、その渋滞を利用した悪魔の導きだったのかも知れない。しゃべり出すと止まらない。英語交じりの意味不明な日本語が切りもなく続く。水を飲むように酒を煽る。笑ったり怒ったり、おどけてみたり燥いだり。
変わって行く彼の姿を見ながら、私は宗教なるものについて思いを巡らしていた。
民衆の貧困、病気、苦しみ、悩み、おののきなどに対し、手を差し伸べ、心を掴み、救いへと導いた者が教祖となるのだろう。好川さんの場合はどうだろう。民衆に手を差し伸ばすべき男が誰かに支えられなければ歩けなくなるほど酩酊してしまうのはどうしたことだろう。神の力を得るべき男が酒の力しか借りられないとはどうしたことか。民衆の心を摑まえなければならない男が誰からも見向きもされないでいるのは何故だろう。絡まれるとややこしい。狭い車内が更に狭くなる。
私はふと朝訪ねた波勝崎の野猿苑でもらったパンフレットを取り出してみた。そこにはこう書かれていた。
──サルを観察する時の注意──
① サルに近寄らない
② サルに触らない
③ サルの目を覗き込まない
④ 菓子や果物を見せない
⑤ 手荷物は要注意
夜9時、440キロの旅を終えて無事到着した。「大丈夫、大丈夫」と言いながら杉田商店街の中にふらふらと消えて行く好川さんの後ろ姿を見ながら、教祖となり切れなかった男の淋しさを思ったものである。
                                 (平成7年作)




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