2020年05月の記事 - ひこばえ
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日向 亮司

Author:日向 亮司
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ひこばえ


2020年05月の記事

山葵田

山葵田に影さす雲の早さかな



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庄司さんと好川さんに纏わる話をもう一つずつ書いておこう。

平成7年4月10日(月)「笹熊」
呑兵衛会7名の1泊2日の伊豆の旅。天候にも恵まれ、絶好の行楽日和を満喫できたようだった──たった一人の男を除いて。
庄司さんはその前日の親交会幹事引継会で日頃食べ慣れぬフランス料理を口にして腹の調子を壊したようである。朝、車に乗り込んだ時から本調子ではないようで、アルコールも進まず、口数も少なく、ごくごく普通の人に成り果てていた。西湘バイパスの途中で軽食を摂ったものの、熱海錦ヶ浦では他の6名が記念写真を撮っている間も公衆便所に入ったまま出て来ない。「大丈夫か?」と聞くと「大丈夫、大丈夫」と連発するが顔はすでに限界に近づいたような白さである。初日の最初の目的地「城ケ崎」に到着するや、車を降りてすぐに吐いたようである。人出でごった返す景勝地の入口で前日の日本酒を後悔した訳である。昼はラーメン屋に入った。彼も食べるだろうかと見ているとニンニクまで入れてタレも残さず完食したものだ。会費1万7000円の元を取る決意と見えた。その後、車は渋滞し、ようやく第二の目的地「修善寺」に到着した。少し持ち直したようで「独鈷の湯」に入るという。一人では入りづらいが全員なら怖いものなしである。大勢の観光客に見られながらの入浴となった(写真)。第三の目的地「浄蓮の滝」では下まで降りた。庄司さんも随分と調子が良くなったようで売店でわさび入りソフトクリームなど食べている。観光地で美味いものを食べずして何が旅行ぞ。
車はいよいよ宿泊地である「安良里」を目指して山越えとなった。伊豆の尾根を越える細い道である。ウネウネと曲りながら登っていく。出会う車とてない快適なドライブと思ったその瞬間、不幸が始まった。庄司さんの異常な様子に車を停めるといきなり飛び出して地に伏してラーメンとソフトクリームに別れを告げた。汚れた衣服を洗おうとする間、誰もいない山地にゾロゾロと男7名が車から降りたのだから、見ていたお婆さんが慌てて家に飛び込み助けを求めたようである。農夫と見られる数名が現れて遠巻きにされたので怪しい者ではないことを説明する。オウム真理教と間違えられたようである。片手にビニール袋を持たせ、助手席に座らせて再びスタートした。長い長い登りを終えて峠で小休止した。6名は夕日に向かって立小便。伊豆の海が美しい。「こんなに美しい光景があるだろうか」と感動していると誰かが「庄司がいない」という。確かにさっきまで蹲っていた場所に姿はない。「庄司ィ~、庄司ィ~」と呼ぶが、笹薮を吹く風の音しか聞こえない。妙な静けさの中、ガサガサと笹が動く音。「笹熊だ!」と誰かが叫んだ。「笹熊?」「何だろう、そんな熊いるの?」私は知らなかったが居るらしい。猫よりも少し大きく、手足も太くゴロンとした感じらしい。それらしい説明を聞いていると本当に居そうに思えるから不思議なものである。誰かが小石を拾って笹薮に放った。何の音もしない。もう一つ放ると「プー」という音がして「危ないから投げてよこすな」と庄司の声。我々が夕照の美しさに心奪われていた時に笹薮の中で野糞を垂れていた訳だ。「来年、あのあたりの笹だけが大きく伸びているだろう」と皆で笑いながら宿へ向かった。
旅館「宝来屋」で一人7000円の料理に10000円の豪華舟盛りを追加しての夕食である。女将ちづるの心づくしのサービスを満喫しつつ、一日目の成功を祝って乾杯。随分と回復してきた庄司さんだがやはり本調子ではない。刺身を少し摘まんで、お酒はやはり飲めないようだった。
翌朝は完全復活である。「チクショー、チクショー」と言いながらアジの干物を丸ごと食べて、人の残したアジの頭まで食べた時には会費返還の道を残しておくべきだったかと考えた次第である。
                                 (平成7年作)




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