2018年07月の記事 - ひこばえ
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日向 亮司

Author:日向 亮司
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ひこばえ


2018年07月の記事

夏期講習

根詰めて夏期講習に少し老ゆ



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午後からはパソコンを使っての授業となった。用意されたソフトに文章や数字を入力していくものである。スティックを差し込んでデータを落とし込むところから始まったが、まずはそのスティックを差し込む場所が分からない。
「すみません……」
すぐにスタッフの女性が教えに来てくれた。見れば他の人は何の問題もなく作業を始めている。<フー>先が思いやられる。先生が「〇〇を開いてください」と言う。<えっ、〇〇ってどこ?>モタモタしている時間はない。
「すみません……」
聞いてしまった方が早い。それを繰り返すうちに声を掛けなくても良くなった。視線を向けるとすぐに来てくれるようになり、そのうち後ろで待っていてくれるようになった。理解力不足なのだろう。先生の「〇〇を入力してください」に誰もが質問することなく作業に入って行くのだが、私には必ずと言っていいほど疑問が湧いてしまう。また覚えようとしてノートに書くのだが、書いているうちに先生は次へと進んでいく。「はい、ここは3分で終わらせてください」とやっている。<ムムム、ここで優等生になる必要はない。いやいや、優等生になどなれる訳がない。少なくとも落ちこぼれるのだけはよそう>徐々に仕事が雑になってくる。
総じてパソコンは後のこととした。それよりも考え方である。考え方さえしっかりすれば、パソコンは後からでも誰かにやってもらえばいい話である。
学んだことを書いておこう。ノートからの拾い書きである。
① 社内で一番仕事の出来る人を可視化する。
② その人がやっていることを可視化し数値化して全員の目標とする。
③ 人は褒められて認められて育つ。
④ 成長シートを作る。成長シートは自己成長シートであり、部下育成シートである。
⑤ 生産高を上げるのではない、生産性を上げるのだ。生産性が悪いと残業代ばかりが嵩む。
⑥ 給料を上げるために上を目指すのではない。自分を高めるために上を目指すのだ。
⑦ 成果主義では人を教えない人が上に行く。
⑧ 部下を育ててこその上司である。部下も上司の成長を待っている。
⑨ 管理者の評価項目に「人を育てる」は必須である。
⑩ 管理者の仕事が明確になっていない。明確でないから成長しないのだ。
⑪ 仕事は数値化する。「お前の仕事は〇〇の数値を上げることだ」と全て数値で示す。
⑫ 管理職にも中堅層にも総務にも事務員にも期待成果は数値で示さなければならない。
⑬ 成長支援会議で全社員の成長を確かめる。
⑭ 人事制度を作るのに完璧を目指す必要はない。間違ったら直し、問題が発生したら解決していけばいい。
                                (平成30年作)




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夏木立

悲観よし楽観もよし夏木立



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研修会は私を含め16名の生徒が参加して始まった。生徒といっても皆さん社長さんばかりで、見渡したところ私が最年長のようである。教壇で講師の先生が話をし、スタッフ5~6名が教室の後ろにいてサポートしてくれるというスタイルである。

講師「これからこの時期、皆さんの会社では賞与が支給されます。もう支給されたところもあるかも知れません。それぞれの支給額はどうやって決めているでしょうか。多かれ少なかれ、社長さんが鉛筆ナメナメ、苦労して決めているのではないでしょうか。社員から聞かれます。『社長、金額はどうやって決めているのですか?』社長さんとしては苦しいところです。答えようがない。答えられるはずがないのです。基準がないのですから。しかしそれでいいのです。社長さんはそう聞かれたら自信を持ってこう答えるべきです。『俺の勘で決めているんだ』そして付け加えてください。『俺の勘は今まで狂ったことがない』と。冗談のように聞こえるかも知れませんが、これが実態です。そしてこの実態こそが正しいのです。社長さんが支給額を上げたり下げたりするには理由があります。社長さんがやっている評価こそが正しいと思うべきなのです。これからこの研修会でそれぞれの人事評価制度を作って行きますが、作り方は社長さんの今行っている評価に近づけていくというものです。他人の会社の人事評価制度を作るのではありません。自分の会社の制度ですから、社長さんが今やっていることに沿って作って行くしかないのです」
前の週の金曜日に賞与を支給してきたばかりである。まさに自分の実態を見られていたかのような話である。ユーモアを交えながら、グイグイと話の中に引き込んでいく。
講師「この人事制度を作るにあたり、目的をハッキリさせておきましょう。いくら立派なものを作ったところで社員の皆さんがソッポを向くようなものでは意味がありません。社員あっての会社であり、社員のための制度にしなければなりません。その制度によって社員の一人一人がやる気を出し、成長を目指すようなものでなければなりません。『社員の成長のために作る人事制度』であることをしっかりと踏まえて、学んで行ってください」
話が面白いのは本人の経験に裏打ちされた内容だからである。説得力がある。言われれば尤もと思うことばかりでグイグイと話に引き込んでいく。<社員をやる気にさせる>と言われて、心動かされない社長がいるだろうか。<目から鱗が落ちる>とはこのようなことを言うのだろう。
順調にスタートした。
(注)松下幸之助の言葉に「楽観よし悲観よし、悲観の中にも道があり、楽観の中にも道がある」がある。
                                 (平成30年作)




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受験生

受験生めくや鉢巻など締めて



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荷物を持って大学校に向かった。ほろ酔いなのでイヤに遠く感じた。入ると守衛さんがいて受講生はさらにその奥の建物だと教えられる。広い中庭を横切って宿泊棟へと進んだ。大きなカウンターがあり、女性が2名立っていた。名前を言うとすぐに手続きしてくれていろいろと説明してくれたが覚えられるものではない。明朝の朝食時間と場所だけはしっかり覚えて部屋のキーを預かった。6階である。エレベーターで上がるとシーンとして人がいる雰囲気ではない。自分の部屋を探してドアを開けた。
「セメー!」
狭いの意味である(笑)。今まで泊まったどこのホテルより狭いと思った。もちろん風呂はない。トイレはない。テレビも冷蔵庫もない。あるのはベッドと椅子と机だけである(写真)。荷物を下ろして、しばしベッドに腰掛けて呆然とした。窓は開かない。建物自体が外壁の工事中なので窓を開けないようにと釘を刺されたばかりである。部屋着に着替えてパソコンを取り出した。講習会で使用するというので持参したのだ。
「立ち上がるだろうか?」
パソコン音痴の私にしてみるとこれが一番の気掛かりである。電源を入れ、いつものように立ち上げてみた。画面は立ち上がった。インターネットに繋げてみた。
「ネットワークに接続されていません」
と出た。説明書きが5項目ほど書かれているが、読む気にもならない。妻にメールしてみた。
「Wi―Fiに繋がなくっちゃ」と返ってきた。
室内にある説明書を開いて「Wi―Fi接続設定」を読んでみた。ルータ、ケーブル、アダプター、RANなどと書かれていて、何のことかさっぱり分からない。そのページの写真を撮り、メールしてみた。
「頑張れ、受験生」
娘から応援のメッセージが届いた。
「ありがとう、風呂に行ってきます」と私。
「早く寝た方がいいと思います。おやすみ」と妻。
                                 (平成30年作)




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椋鳥

椋鳥騒ぐ駅前に灯のともる頃



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講習会場は東京の東大和市にある中小企業大学校である。
「結構遠いなぁ。電車で行った方がいいだろうか、車の方がいいだろうか?」
社内での会話である。
「駐車場はあるのですか?」
「どうかな、分からない」
「調べてみましょうか」
「頼むよ」
こういうことは得意な人に調べてもらった方が良い。下手に自分で調べると碌なことにならない。結果は大学校には駐車場はなく、近辺の駐車場を使うしかないとのこと。24時間1000円で停められるという。
「いやに安いな。本当に会場の近くなのか?」
「駅前です。大型駐車場ですから大丈夫です。もし満杯だったとしても近くに駐車場はたくさんあります」
ということで車で行くことにした。2泊の旅である。妻は鞄に着替えや歯ブラシなどいろいろと詰め込んでくれた。
会社を3時過ぎに出て渋滞に巻き込まれながらも6時には目的地の駐車場に到着した。その日は大学校の寮に入り、寝るだけなので夕食を摂ってから向かうことにした。駅前を一回り歩いて、戻って駅ビルのレストランに入った。広い店内に客はいない。窓際に席を取ってウェイトレスに生ビールを注文した。
以下は妻とのメールである。
「東大和市は田舎だよ。駅前駐車場24時間800円。安いよ。駅前食堂に人はなし。電信柱に鳥がいっぱい」
「ツグミの群れ?ツグミは臭いし、うるさいし」
「椋鳥(ムクドリ)だよ。昔は田んぼや畑があったけど、人間がそこから追いやってしまったのでこうして駅前で群れている。今、ビールを飲みながら人間の在り方を考えている。オネエサン、ビール、もう一杯!」
「ツグミも椋鳥も臭い」
「今一斉に飛び立った。今夜はどこで過ごすやら。今日も旅寝の旅カラス。車の中で浪曲『国定忠治』を聴いてきた」
「旅が重なるのはどうだろう。推敲の余地あり」
「そうそう、今それを思っていたところ。分かってるジャン!」
「ホジホジ(図柄)」
「才能あり!」
「完全に同意(図柄)」
「今日も仮寝の旅カラスと直してみました」
                                 (平成30年作)




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走り梅雨

憂きことのなほこの上に走り梅雨



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会社で企業診断をしてもらう機会があった。知人の中小企業診断士が大勢仲間を連れてやってきた。企業診断の勉強会に参加している人達が最後に実地で中小企業の診断をしてみようということになって当社に声が掛かったようである。工場に来ての診断は一日だったが、事前に決算書やアンケート記入など求められ考えていたより本格的なものだった。当日は私に対する質疑や工場の管理者や職場長などへのインタビューも行われ、工場内をくまなく見て行った。それから1か月ほどして結果を知らせにやってきた。リーダーが結果を説明してくれるという。どのような診断結果か楽しみである。
リーダー「これから先日行いました工場診断の結果を説明させていただきます。順を追って説明してまいりますが、1ページ目を開いた時に社長さんにはお怒りにならないようお願いしたいと思います。これはここにおります全員でまとめたものですので、総意ということでご理解いただきたいと思います」
私「えっ?私が怒り出すような内容になってるの?」
リーダー「いえ、決してそういう訳ではありませんが、そう取られる可能性もあろうかと思いまして、念のため」
私「大丈夫だよ。最近、辛抱強くなってきているので(笑)」
リーダー「それでは始めさせていただきます。まず今回診断した結果の表題です。1ページ目に『日向のナカゴメから、組織のナカゴメへ』と題させていただきました」
私「そうなの?これで私が怒ると思ったの?大丈夫ですよ、これ位は(笑)」
リーダー「いやいや、有難うございます。失礼に当たるかと思いましたので、そうおっしゃっていただけると助かります(笑)」
私「まぁ、内心、相当に傷ついてはいますけど(笑)」
それから約1時間掛けて詳細な説明がされた。会社の内容はまずまずだが、社長である私の色が強過ぎて、これからはどんどん部下に仕事を任せて行く方が良いというものだった。
リーダー「今、昇級、昇格、賞与についても全部社長お一人で決められているとか。もし社長に何かありましたら、どうなるでしょう。今から準備しておくことがたくさんあるように思います」

終ってすぐに当社の顧問の社会保険労務士の先生に相談した。
私「先生、何でも私が決めているのは良くないんですって。なにか良い評価方法がありますか。参考になるものがあったら教えてください」
先生からすぐに評価制度のサンプルが送られてきた。しかし見てみるとすぐに会社で真似できるような内容ではない。<これはやった所ですぐに頓挫するな>と思うようなものだった。そう思っていた所にちょうど「人事評価制度講習」のチラシが送られてきた。いつもならゴミ箱行きの所だが、その時は封を開いてみた。
「社員と組織を成長させる人事制度構築──人材が育ち、業績が向上する人事制度の作り方」
4日間コースの研修会である。
「行ってみるか!」
すぐに申込み、講師の先生の著作も取り寄せて読んでみた(写真)。
(注)陽明学者熊沢蕃山の歌に「憂きことのなほこの上に積もれかし限りある身の力試さん」がある。
                                 (平成30年作)




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雨季

友あり雨季なり遠方より来たる



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およそ5年振りの再会。取引先の会社の総務部長さんである。所属する会合でいつも一緒だったのだが、この頃私がその会合に出なくなったので顔を合わせることがなくなっている。
「久し振りですねぇ。日向さん、少し太ったね」
「いやいや、お互い様ですよ。太ったでしょ?」
「太りました。今、減量しているところです(笑)」
私のテーブルに席を移し差し向かいで話が始まった。
「まだ現役でしょ?」
「日向さんは社長さんだからいつまでもやっていられるでしょうけど、こっちは雇われている身だからいつでも要らないと言われれば辞めるしかない。もうそろそろかなぁと思ってますよ。社長が今の〇〇に変わってからは1年契約ということになってしまって、なんだか居ても居なくてもいいような感じになっちゃって……まぁ、いるうちは頑張りますけどね(笑)」
私と同い年である。明るい大酒飲みで何度も楽しく飲んだ。いい思い出ばかりである。
彼の注文したラーメンとチャーハンが来た。
「減量中の割にはよく食べるね」
「家じゃ、かみさんがうるさいので、こういう時はちょっとね(笑)。それにしても日向さんも相変わらずだよねぇ。昼間からビールを飲んで、またそのビールで文句を言っているんだから(笑)」
30年の付き合いである。そそくさと食べて「これから孫に会いに行く」と言って出て行ったが、お互い年を取ったものである。それにしてもいやな所を見られてしまったと思った。「この間、日向さんに会ったよ。昼間から一人でビール飲んでたよ」と仲間に話している姿が目に浮かぶ。
                                 (平成30年作)




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生ビール

飲むまいか飲むか小昼の生ビール



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昔は土曜日の休日出勤は朝から晩まで会社にいたものだが、この頃は朝だけ顔を出し帰らせてもらうようにしている。根気が無くなって来たのかも知れない(笑)。朝、「昼はどうしますか?」と聞かれる。弁当を注文するかどうかである。今はほとんど「要らない」と答える。とは言うものの、昼近くまで会社にいるとどこかに食べに行くか、家に帰るしかない。その日も会社の近くの中華料理屋に行くことにした。大型ショッピングセンターの中にあり、中国人だか台湾人だかが経営している店である。「いらっしゃい、ませ~」のイントネーションが日本人とはおよそ違っている。
「ご注文、何に、なさいますか~」
「〇〇定食、お願いします。それと生ビール」
「は~い、分かり、ました~」
定食の種類が多い。10種類くらいあるので好きな物が食べられるのがいい。昼ではあるが、その時はついつい生ビールを頼んでしまった。
「おまちど、さま~」
生ビールが届いた。一口。
「ん?」
ちょっと違う。味が薄いような気がする。生ビールなのでサーバーから注ぐのだろうが、いつも飲むものより少し薄い感じがする。もう一口。やはり薄い。
「おねえさん、ちょっと」
「は~い」
「これ本当にビール?発泡酒じゃないだろうね」
「違いますよ。お客さん、これ、ビールですよ」
ビールであろうが発泡酒であろうが、たとえ水で薄められていようがどうでもいいのだが、一言、言っておきたかっただけなのである。おねえさんは笑顔でビールだと力説していた。
その時、たまたま私の斜前に座っていた男性と目が合った。
「おっ!」
「おー!」
                                 (平成30年作)




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虞美人草

虞美人草触れてその名をうべなへり



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第一幕では漢王に封じられた劉邦が辺鄙な褒中の地で大将軍「韓信」を見出し、強剛な漢軍を形成するまでを描いていく。休憩を挟んでの第二幕は諸侯を味方に付けた劉邦の大軍が楚軍と戦い、垓下に項羽を追い詰め、四面楚歌により楚軍の兵士たちを揺さぶり、項羽を亡ぼすまでを描いていく。最愛の虞姫が窮地の項羽を慰めるように酒を注ぎ、剣舞を舞い、足手まといになるまいと自刃するシーンは美しい(写真)。
「なるほど、なるほど……」と頷きながら観ていた。たった一つの疑問を除いて……。

第一幕の主題は「推薦状」である。劉邦の軍師「張良」が項羽の陣にいてもなかなか重用されない韓信と出会い、ただならぬ才能の持ち主であることを見抜き、劉邦への推薦状を書いて渡すところから始まる。
「推薦状???……そんなシーンが司馬遼太郎の『項羽と劉邦』の中にあっただろうか?」
読んだ記憶が無い。劇ではその推薦状を敢えて見せずに面会に臨む韓信が人を見る目を持たない劉邦に愛想を尽かし、陣を去るなどの重要な役割をその推薦状に与えている。本場中国で演じられる京劇である。史実に基づいているに違いない。そうであればなぜ司馬遼太郎「項羽と劉邦」にはなかったのだろう。読み直してまだ1ヶ月しか経っていない。よもや読み飛ばしはないだろう。モヤモヤした気持ちを残したまま、見終わることになってしまった。
帰宅してすぐに小説を調べたことは勿論である。やはり記述は見つからなかった。
「???」
そんなこともあるだろうと思うことにした。
「京劇ではあり、司馬遼太郎ではなし」と割り切って次の「三国志」に移ることにした。
                                 (平成30年作)




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父の日

父の日を好きなことして一人なり



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池袋の駅に降り立った。久し振りである。40年以上経っているかも知れない。学生だった頃、先輩に連れられて飲みに来て以来だと思う。思い出す場所などもなく駅の近くの「東京芸術劇場」に到着し受付場所を確認した。開場まで30分ほどあったが、喫茶店に入るほどの時間もなかったのでロビーのソファーで人の行き来を眺めていた。
「果たして、京劇、理解できるだろうか?」
1年ほど前に観た「オペラ座の怪人」がさっぱり理解出来なかったので、ある意味トラウマになっているようである。来る前に「通訳のイヤホンでもあるのだろうか?」と妻に聞き、舞台の両サイドに字幕が出ることを調べてもらっている。読んだばかりの「項羽と劉邦」なので、どの場面が演じられようときっと分かるはずだと思っているが、やはり不安は残る。
席は後ろから3番目で、しかも端の方である。申し込みが間際だったので仕方ないと思いつつも、折角なのでもう少しいい場所だったらとも思っていた。開場から開演まで30分しかなかったが、あっという間に席が埋まっていった。私の両隣も着席し、いよいよ開演である。第1幕「桟道を焼く」である。
<ああ、劉邦の左遷のところだな>と分かった。
秦朝末期、楚の懐王が項羽と劉邦に咸陽攻略を命じ、先に咸陽に入った者を王とすると約束する。劉邦が先に咸陽入りを果たしたが、圧倒的な軍事力を誇る項羽の怒りを買うこととなり、劉邦はその軍門に伏す(鴻門の会)。与えられた地は辺鄙な漢中である。3万の軍勢を率いて移動して行くが、その厳しい道のりに多くの者が脱落する。桟道とは千丈の谷に掛けられた橋のことである。その桟道を焼くとは帰り道を絶ち、西の項羽の警戒心を解く漢軍の計略である。
<本を読んでいないと分からないだろうなぁ>
一つ一つを理解出来ることに満足感を覚えつつ、いい感じでスタートした。
                                 (平成30年作)




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柳絮

柳絮飛ぶ虞姫の声音の甲高き



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読み終えた「項羽と劉邦」の余韻に浸る間もなく、その京劇「項羽と劉邦~覇王別姫」が東京で開かれることを知った。たまたまである。「2018年、東京、名古屋、大阪で開催決定!!」と書かれている記事を読んだのである。しかも6月9日から17日までと開催日時が迫っている。
<おー、何と言うタイミングだろう。これは行くしかない。チケットは取れるだろうか>
妻に調べてもらおうとすぐにメールした。
「もう一杯かも知れないけど調べてみて。お願い!」
しばらくして返信が来た。
「6月14日以降だったら、取れるみたいだよ。因みに私は結構ですが……」
「6月17日の昼でお願いします。日曜日、一人で行ってきます」
「取れたよ。楽しんできてね」
6月4日のことである。

実はこの京劇、17年前に一度観ている。平成13年5月に社員旅行で北京を訪れた時のことである。2日目の夜、上海雑技団によるショーの中で京劇が演じられ、その演目が「項羽と劉邦」だったのである。小説を読んでいたので直前まで楽しみにしていた。しかし奇術や梯子のショーまでは覚えていたが、肝心の京劇の時には居眠りをしてしまった。紹興酒や53度の強い酒を飲んだと社内報に書かれている。最前列での観劇でありながら、酔ってしまっていて何も覚えていない。朦朧としながら外に出たことだけは覚えている。あれから17年である。
<懐かしいなぁ>と思いながら17年前の社内報を捲ってみた。記事の初めに李白の「対酌」という詩を載せている。私の趣味丸出しの社内報である。

両人対酌山花開  両人対酌して山花開く
一杯一杯復一杯  一杯一杯復た一杯
我酔欲眠卿且去  我酔いて眠らんと欲す 卿(きみ)且(しばら)く去れ
明朝有意抱琴来  明朝 意有らば琴を抱いて来たれ
 (注)虞姫(ぐき)とは覇王項羽の愛人。虞美人とも言う。中国四大美人の一人。   
                                 (平成30年作)  




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梅雨寒し

鶏ガラの灰汁を掬ひて梅雨寒し



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昨年暮れから大型機械導入の計画を進めてきた。決算の6月末までに設置という条件で3月に契約した。機械の名前は「アキエス」。ラテン語で「最先端」の意味だという。ここ数年の会社の設備投資額は優に10億円を超える。投資が失敗すれば大変なことだが、今まで失敗したことがない。今回も成功するだろう。
設備は年々新しくなり、やり方が変わる。昔プレスでコツコツと加工していた物が、今はパンチレーザー複合機という機械が無人で24時間加工してくれる。時代は大きく変わった。

機械職場の棚の上にプレスの金型が置かれていた(写真)。埃が被って使われた様子がない。担当者を呼んで聞いてみると、たまに使うことがあるがほとんど使っていないという。
「なんで要らない物を取っておくんだ?」
「お客さんから預かっているという金型もあるようです。また今はほとんど来なくなっていますが、たまに注文の来る物もあります。もしその時に無かったら大変です」
「しかし、もうほとんどプレスで作業することはなくなったんじゃないか。みんな複合機に変わっているだろう」
「はい……」
「『鶏肋』という言葉を知ってるか?」
「いいえ、知りません」
「鶏のあばら骨のことだ。役に立ちそうもないが、捨てるには惜しい気がするってやつだ。要るか要らないか分からないという物はほとんど要らないと考えた方がいい。月曜日、関係者全員集めて結論出させるから、全部棚から降ろして台車に載せておけ」
「はい」

回りくどい話をしたが、この「鶏肋(けいろく)」についてである。大学生の頃だったか、働き始めた頃だったか記憶が曖昧だが、懸命に中国のことわざを覚えようとしたことがあった。意味を調べることは勿論、漢字の練習もして全部覚えてしまおうと思ったのである。しかし、あれから40年も経って肝心の三国志を読んでいないことに気付いた。三国志演義の簡単な説明書は読んだ気がするが本格的には読んでいない。吉川英治著「三国志」全8巻を読むことにした。そしてその前に、昔一度読んだことのある司馬遼太郎著「項羽と劉邦」を読み直しておこうと思った。読んでからもう20年以上も経っている。中国の歴史の順番に沿ってもう一度読み直すという辺りは私の変質的な性格とも言える。本の山の中から<上中下3巻>を探し出して読み始め、約1か月掛かってようやく読み終えた。
                                 (平成30年作)




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父の日

浪曲を唸りて父の日なりけり



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「どうして、こんなことになったのだろう?」
妻は戸惑い顔である。
「どこで間違えてしまったのかしら?浪曲歌謡なんか頼んでないのに……パソコンでも見たことすらないというのに」
「取り替えてもらえばいいだけだよ。電話してみた?」
「土日は休みで繋がらないから、月曜日に掛けてみる」
「よくあることだよ」
「そもそも、注文する前に貴方にメールを送ったよね、確認してって。よく見てくれたの?」
<えっ、俺?>急に雲行きが怪しくなってきた。確かにメールが送られてきて<これでいい?>と確認してきている。あの時、よく見ないで<オッケー、オッケー>とやってしまった。間違うはずはないと信じ切って、よく見なかったのである。妻はそこを突いてきた。
「最悪、返品出来ないとなっても大したことじゃないよ」と私。
「もう……」

月曜日、帰宅すると笑顔の妻である。
「品物の交換となると手続きが面倒で、新しいのが来るのに随分日数が掛かるということだったので、まずは返品ということにしてもらった。まだ請求前だったので、その方が早いんだって」
「良かったじゃん。そもそも、どこで間違えたの?こっちのミス?向こうのミス?」
「私のミスだったみたい。あの商品しか見ていなかったので<カゴに入れる>の時にまさか違う商品を選んでいるとは気が付かなかったのよねぇ。どうしてその商品を選んだのかは今も分からないけど」
「誰にでもミスはあるよ。結果オーライで良かったじゃん」
「それにしても電話で何回も浪曲、浪曲と言わなければならなかったから恥ずかしかったわよ。何で私が年寄臭い浪曲を連呼しなければならないのか悲しくなったわよ。しかも商品の発送が随分と先になりそうなことを言うので<父の日のプレゼントに間に合わせたい>と言って早めてもらったんだけど、面倒なので貴方のことを自分の夫ではなく、父ということにしてしまったわよ」
「……」

それから数日して到着した。今度は正真正銘の「浪曲名人選」である(写真)。間違いない。
「妻は夫をいたわりつ~、夫は妻を慕いつつ~、頃は六月なかのころ~、夏とはいえど片田舎~、木立の森のいと涼し~」(浪花亭綾太郎「壷坂霊験記」の一節より)
                                 (平成30年作)




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扇子

正座してラヂオの前の扇子かな



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浪曲との接点と言えば子供の頃まで遡る。以前このブログにも書いたことがある親戚の中島松次郎こと「じっちゃん」(平成28年9月28日、ひこばえ「花アカシア」)がよく寝る前にラジオで聴いていたのである。遊びに行く。夕飯をご馳走になる。じっちゃんは日本酒を飲むが8時には布団に入る。我々はテレビを見ているが、襖一枚隔てて浪曲が流れて来る。イヤホンなどある訳もなく枕元のラジオから聞こえて来るので、子供心にも<うるさいなぁ、浪曲の何が面白いのだろう>と思っていたものである。
自分も大人になり、ようやくその良さが分かってくる。車の中などで聴いて、いいフレーズなどは唸ってもみる。先日も昔買ったCDの中に「沓掛時次郎」などを見つけて聴き入った。
「おもしろい!」
今更ながら、じっちゃんが寝ながら聴いていた理由がよく分かったものである。
そう思っていた時に新聞で「浪曲名人選、愛蔵版CD全12巻」の広告を目にした。
「これ、欲しい!」
隣で妻が「何、何?」と覗いて来たが、浪曲と知って「な~んだ」ということになった。
それから2ヵ月も経った頃である。急に妻が「あれ、本当に欲しいの?」と聞いてきた。
「何のこと?」
「以前、言っていた浪曲のCD、まだ欲しいの?」
「おっ、買ってくれるの?欲しい、欲しい。お願いしますよ(笑)」
「じゃ、父の日のプレゼントということでね」
「お願いします」
その日、会社にいるとメールが入った。<これでいい?>見つけてくれたようである。
<オッケー。オッケー、よろしく!>と返信した。しばらくして<注文完了>のメールが入った。

その数日後、帰宅すると大きな箱が届いていた。
「おっ、届いたの?ありがとう」
「どういたしまして」
風呂に入り、食事をし、寝る前になってその箱を開けてみた。
「???」
三波春夫や村田英雄の顔が写ったパンフレットが入っている。<サービス品かな?>と思った。<浪曲12巻の付録に歌まで入っているとは気が利いているなぁ>と思った。しかし、中味を見て驚いた。「浪曲歌謡の世界、全10巻」となっている。妻は入浴中である。ドアを開けて言った。
「違う商品が入ってた!」
「えっ、嘘!」
久し振りに妻の裸を見た。
                                 (平成30年作)




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