2017年09月の記事 - ひこばえ
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ひこばえ


2017年09月の記事

爽やか

壇上に立つ爽やかに背を伸ばし



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会場は横浜スタジアム傍の「ホテル横浜ガーデン」である。朝5時に到着して会場の準備をしてくれている人がいる。私も今までは5時半を目安に行くようにしていたが、会長になったので5時15分と少し繰り上げることにした。それには家を4時45分には出なければならない。すなわち3時半には起き出すことになる。前日に深酒でもしようものなら、辛いことこの上ない。
机と椅子はホテルの人が並べておいてくれる。その上に当日の配布物や必要なものを手分けしてセットしていく。5時40分頃には準備を終え、50分になると役員朝礼のリハーサルが行われる。毎週行うことだが、このリハーサルが大切なのである。一通り終えて6時ちょうどに本番が行なわれ、会員やお客様を迎える心構えを全員で共有する。大体20人位の朝礼だが、今期はそれを30人にしようと考えている。6時10分に終ると会場の扉を開き、外で待っていてくれた人達を迎える。ほとんどが知った顔だが、たまに知らない人も来場する。ここはすぐさまご挨拶である。知らない人を快く出迎えることが会長の務めである。6時25分に全員が着席して静黙の場を作る。6時28分にベルが鳴り、6時半ちょうどにモーニングセミナーが始まる。
まずは全員で歌を歌う。初めて来た人はこの歌を聞いて驚く。
「何、何、何?これは何?これって宗教?」
セミナーのスタートに相応しい歌なのだが、初めての人はほとんどが驚く。私も初めは妙な気分がしたものである。しかし大概は2、3回で慣れる。歌の内容を確認すると納得する。その次に「万人幸福の栞17箇条」を輪読する。倫理の本質を分かりやすく纏めた文章を全員で読むのである。1日1章なので、約5分間だが全員で読んでいく。どれもこれも心に沁みる有難い教えである。次が会長挨拶。全員の拍手に迎えられ壇上で挨拶をする。約5分間。「会長はこの挨拶に命を掛ける」と言われるくらい重要な時間である。その次が会員スピーチである。順番に指名され、これまた5分間話をする。そのあとが講話となる。講師は倫理研究所から派遣された先生の時もあれば外部から招いた講師の時もある。時に会員による倫理の体験談もあり、テーマはその時々で変わる。その日は期の初めなので会長になったばかりの私が30分間の所信表明を行なった。いい感じである。笑いも取りつつ、方針を述べ、最後に全員の協力をお願いした。そのあとが事務長による事務報告があり、最後にスローガンを斉唱して終了となる。きっちり60分間である。
そのあと全員で写真撮影を行い朝食会となる。これがまた楽しい。会員スピーチや講師の話の感想を述べ、和気藹々の1時間を過ごす。
今期のスローガンを「みんなで拡げよう倫理の輪170」とし、楽しく充実した1年にすることを全員で誓い合った。
                                 (平成29年作)

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露の世にひときは光る刹那あり



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この9月、横浜市倫理法人会の会長に就任した。会員150人を要する大所帯である。俳句の話でもするのであれば気が楽だが基本は「倫理」である。「なんでこの私が……」と思いながらも会員の皆さんの推挙により受けることになった。「頼まれごとは試されごと」という。自分を成長させるチャンスと捉え、人の上に立つ訓練を重ねてみることにした。

3年前、知人に勧められて入会した。活力朝礼を会社に導入するためである。毎週土曜日の朝6時半の勉強会なので長く続く訳がないと思っていた。まずは朝礼を会社に取り込むまでと決めて通い始めたが、どういう訳か止めずにここまで来てしまった。なぜ続いたのだろう。それは本物の教えのようだと気付いたからである。ある講師の話を聴く。泣かされる。感動する。「やばい、やばい」と思いつつも涙が流れて仕方がない。また別の講師の話を聴く。「朝っぱらから泣いてどうする」と思いながらも泣けてくる。何に泣かされるのだろう。自分の弱い所に触れられるのである。自分の来し方が思い浮かんできて泣けてくるのである。親のこと、妻のこと、子供のこと、社員のこと、争ってきた人達のこと……。話を聴きながらたくさんの人に迷惑を掛けてきたことを思い出して泣けてくるのである。
「あなたにとって一番大切なものは何ですか?」と問われ「それは自分自身ですよ」と教えられる。「そして自分自身と同じように大切にすべきは家族ですよ」と教えられる。「たった一度の人生を大切に生きていますか?」と言われ「今を大切にしない人は幸せになれませんよ」と教えられる。今までは気付きもせず、気付いても逃げてばかりいた出来事に対峙させられ、やってみると上手くいくという体験をさせられる。いかに上辺だけの人生を歩んできた来たかを知らされ、自分勝手な生き方ばかりしてきたことに気付かされる。本当の意味で従業員を大切にして来なかった経営者であったことを知らされる。他人を変えるのではなく自分を変えることを教えられる。
すぐに止めるだろうと思っていた私に会長職が回ってきた。最も倫理に遠い男と思っていた私に会を引っ張って行けという。考えようによっては有難いことかも知れない。この役目をきちんと果たした暁には少しはまともな男になっているかも知れないと考えた。与えてくれたチャンスに感謝することにした。たった一度の人生だから幸せになるために努力しようと決意した。9月2日(土)会長として所信表明に臨んだ。
                                 (平成29年作)

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夏果て

夏果ての悲しき民の絵と思ふ



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「生憎ですが機内からは連絡できないことになっております。成田空港の手荷物受け取り場所の近くにJALのカウンターがございます。そちらで問い合わせていただくことになります」スチュワーデスさんは即答してくれた。
「きっと見つかるでしょう」とも添えてくれた。笑顔での一言は心に染みるものである。安心して熟睡し朝を迎えることが出来た。
到着し空港の手荷物受け取り場所でさっそく係員に聞いてみた。最初は要領を得なかったがいろいろと調べてくれてJALのカウンターまで連れて行ってくれた。あとはスムーズである。事情を聞かれ、必要書類を作り、「見つからないこともあることだけはご理解下さい」と言われ、あとは待つだけという状態を作ってくれた。
家に帰ったのは日曜日である。さすがにその日は疲れていたようでウツラウツラして過ごしたが、翌日にはこのブログをパソコンに打ち込み始めていた。2日間で20のブログを書き終えた。忘れないうちに終わらせておこうである。
月曜日の昼にJALの女性から電話が入った。品物はもう成田に届き、明日には届けることが可能だという。
「申し訳ございませんが、ご自宅までの送料はご負担いただくことになりますがよろしいでしょうか?」と言う。もちろんである。
「ハノイからの送料はいいのですか?」
「もちろん必要ございません」
素晴らしい対応である。ハノイのラウンジで保管してくれていたことも、即日成田行きに載せてくれたことも、連絡の迅速さにも感謝、感謝である。
翌日の午前中に丁寧に梱包されて届けられた。1ヶ月半にも亘り続けてきたベトナム旅行記の最後はこの絵の写真である。ノンラーを被った6人のベトナム人が描かれている。この絵を見るたびに思い出すだろう。楽しかった4泊5日の旅行記をこれで終えることとする。
                                 (平成29年作)

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夏終る

夏終るロビーに忘れ物一つ



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買った絵を大切に抱えながら伝統芸能である「水上人形劇」を見、最後の夕食を済ませ空港に到着した。飛行機は真夜中0時の出発である。3時間程の余裕があった。ラウンジでシャワーを浴び、ソフトドリンクなどを飲みながら開高健の「輝ける闇」を読んでいた。旅行中、空港やホテルの就寝前に読み続け、あと数ページを残すだけとなっていた。
小説は作者がベトナム戦争取材のため従軍し、激しい戦闘に巻き込まれながらも奇跡的に生還した経験をもとに書かれている。アメリカ人やベトナム人と触れ合いながら戦場の近くで安寧な日々を送っていたが、身近な人間が兵士として戦場に送られたことに触発され、自らも進んで戦場に行くことを決意する。ラウンジで読み始めたのはその最後の章である。どこからともなく弾が飛んでくる中、周りの兵士が次々と命を落としていく。ジャングルのどこに敵兵が潜んでいるのか分からない。泥の中に疲れ果てながらも前に進むしかない状況。ただただ生き残るために前に進むというシーンである。
読み終えた時には心地良い緊張感の中にいた。少し離れた席にTさんがいたが読み終えて目を上げた時にはいなくなっていた。妻も離れた席で休んでいた。しばらくして妻が時間の迫ったことを知らせに来た。
私「オッケー、行こうか」
立ち上がって目の前のテーブルを片付け、ジュースの缶などを捨てに行った。受付時間が迫っていた。ラウンジを出て長い通路を歩き急ぎ足で飛行機に乗り込んだ。機内で手荷物を上のボックスに収納し、ホッと席に着いた時だった。
私「忘れた!」
妻「何を?」
私「絵」
妻「えっ!」
洒落を言っている場合ではない。さっきまでいたJALのラウンジに忘れて来てしまったのである。絵は目の前のテーブルの横に立て掛けていた。到底取りに戻るような時間はない。
私「どうしよう……」
妻「諦めるしかないんじゃない?」
私「折角買ってきたのに……」
旅行の最後の最後にミスをしてしまった。あんなに頑張って手に入れたものをちょっとしたミスで手放すことになってしまった。
私「………」
頭の中で考えていた。出来ることは何だろう。取り戻す方法はないだろうか。空港の中で置き忘れたのなら兎も角、JALのラウンジの中である。誰かが持ち去るというような品物ではない。きっと、あそこにあるはずだ。あることは確かなのだ。それをどうやって取り戻すかだ。スチュワーデスに声を掛けた。
私「済みません。忘れ物をしてしまいました。問い合わせをしてもらえないでしょうか?」
                                 (平成29年作)

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夏シャツ

夏シヤツよこの絵お前が描いたのか



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4時間かけてハノイに戻った。途中、桃の写真を撮ったり、カーチェイサーを眺めたりしていたがそれ以外はほとんど爆睡である。バスから降り、朦朧としつつも水上人形劇が始まるまでの時間をフリータイムにしてもらい油絵の店を訪ねることにした。前日と同様、男性は筆を取ってキャンバスに向かっていた。目的の絵を見直してみて改めていい絵に思えた。中に入って男性に声を掛けた。
「ハウマッチ?」
「#☓※」
「???」
すぐに男性は電卓を取りに行った。目の前で電卓を叩いた。
「13」
「???」
13とは何だろう?
「ドン?ドル?」
「ドル」
13ドル。1,300円ということだろうか。いやに安いなぁと思った。私としては5,000円から10,000円位のことを想定していたので少し拍子抜けするような気がした。
「フレーム、フレーム」
男性はさらに電卓を叩く。
「17」
ん?額のほうが高いのか。それとも額込みか?
「トータル、トータル」
男性は頷いている。17を指さしている。額込みのようだ。額が4ドル、400円ということになる。どんな額だろう。男性が奥から額を持ってきた。絵に合わせてみる。まずまずだ。
「オッケー、オッケー」
男性が笑顔になった。ようやく売買が成立したことを理解したらしい。早速額に入れようとした時に問題が発生した。額に絵が入らないのだ。いろいろやっていたがどうしても入らないらしい。考えた末、男性は絵をばらし始めた。布を留めている裏のホッチキスを外し、枠の木をバラバラにし始めた。終いにはノコギリで木を切り始めた(写真)。必死になっているのが分かる。この人にとって1,700円とはどれ位の価値があるのだろう。15分ほど掛けて完成させ丁寧に梱包をしてくれた時、私は金額以上の有り難い物を手にしたような気がした。
「サンキュー、サンキュー」
英語となると同じ言葉を2回繰り返すという癖を私自身はまだ気付いていない(笑)。
                                 (平成29年作)

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蝦蛄

蝦蛄売の売れねば叩く桶のふち



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出船してすぐに我々の船に小舟が横付けされた。地元の漁師さんのようである。男性が乗り込んできて3つの桶を客室に運び込んできた。蝦蛄(しゃこ)とワタリガニと貝である。男性は一言も声を発しない。ただ、買ってくれという意思だけは伝わってくる。他の客も覗き込んできて「何だ、何だ」とやっている。ガイドさんが説明してくれる。これを買うと船で調理をして昼食に出してくれるという。しかし誰も買おうとしない。見ているだけである。すると男性はワタリガニを手に取った。カニはバタバタと手足を動かした。「こんなに元気だぞー」と言いたそうである。しかしそれを見ても誰も反応しない。次に蝦蛄を掴んだ。これまたピチピチと尻尾を振る。「これはどうだ!」と言いたげである。蝦蛄には卵が一杯詰まっている。しかしこれにも反応しない。男性はジッとしている。待っているだけである。周りを取り囲んでいた客が自分たちの席に戻り始めた段階で諦めたようである。急に立ち上がって桶を運び始めた。外で男性が何か言っているのが聞こえる。結構大きな声である。「全然、駄目だったよ」と言っているのだろう。小舟の女性が何か言っている。奥さんかも知れない。「ちゃんと、カニをバタバタさせてみせたの!」と言っているのかも知れない。男性は戻ってきて最後の桶を持ち上げてサッサと出て行った。
男性が去ってからのTさんの話である。
「ベトナム旅行3大買ってはいけない物の1つに蝦蛄を買うがあるんですよねぇ」
「なになに、どういうこと?」
「前にここに来た人が蝦蛄を買って調理を頼んだそうなんだけど、出てきた蝦蛄は泥臭くて食べられず、しかも卵はどこかへ行っちゃっていて最悪だったと言っていたので……」
「なるほど、なるほど。あと2つは?」
「今日これから行く水上人形劇の会場の前で売っている人形。思わず買いたくなるそうなんだけど、よく見ると粗悪品で本物とは似て非なるニセモノということ」
「へぇー」
「もう一つは?」
「ちょっと忘れてしまいました。思い出しましたらお伝えします(笑)」
旅行を終えた今でも、彼女からの3つ目は届いていない(笑)。
                                 (平成29年作)

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遊船

遊船の犇めく世界遺産かな



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いよいよ世界遺産「ハロン湾クルーズ」である。船着き場はごった返していた。改札を出ると何やら生演奏が行われ、お土産屋が列をなし、その前に船が何艘も並んでいる。どの船もベトナム国旗を立てている。ハイさん曰く600艘だという。本当かどうかは分からない。我々の乗り込む船まで相当の距離を歩いた。番号が振られているのである。何時の出発かを聞くこともしない。全てハイさん任せである。30分位は待たされただろうか。ようやく乗り込む船が到着した。一斉に乗り込んだ。他のお客も一緒である。すべて日本人のようだ。内装は豪華なものであった。テーブルも椅子もピカピカに磨き込まれている。
「随分、いい船だねぇ。全部こんな感じ?」と私。
「いえいえ、いい船もあればそうでない船もあります(笑)」とハイさん。
ランクがあるようである。飲み物とトイレの案内があった。3時間のクルーズと聞いている。暑い。まずはビールをもらうことにした。
「もう、飲みますか?」とハイさん。
「昼食まで待てないよ」と私。
船はすぐに出航した。みな2階のデッキに上り景観を眺めている。籐椅子などが置かれていて横になる人もいる。ビールを片手に最高である。しばらくして船がたくさんいる場所に到着した。降りるという。
「えっ、まだ10分しか経ってないジャン。ビールも飲み終えていないよ」
一気に飲み干して上陸した。鍾乳洞の見学である。凄い人数である。「こんなに船着き場に人がいたかよ」と言いたくなるほどの人である。その人が全て狭い入り口から中へと入っていく。暑い。しかも蒸す。足場が滑る。中国人ガイドだろうか、大きな声でがなり立てている。列が渋滞して途中で立ち止まる。汗が流れ落ちる。凄い鍾乳洞なのかも知れないが、この人の多さでは見学どころではない。30分位掛かってようやく外へ出た。深呼吸である。そこで写した一枚である。船が犇めいている。
船が出船するときも大わらわだった。出て行こうとする船と入ろうとする船がぶつかるのである。よく見るとどの船も傷だらけであり、窓ガラスが割れている船もある。世界遺産ともなると、少々の荒っぽさは覚悟しなければならないようである。
                                 (平成29年作)

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あっぱっぱ

ペディキュアは女子の嗜みあつぱつぱ



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翌朝は早起きしてハロンの町を歩いてみた。6時ともなると町は動き出している。昨日のマッサージ屋の前を通るととても派手な看板を立てていて周囲と少しそぐわない建物であることが分かる。少し行ったところに店屋があり、オートバイを停めて何かを買っている人がいる。何かなぁと思って見てみるとパンを売っているようである。「買ってみるか」と思った。手帳を取り出し、それが「バインミー」であることを確認する。「第8位、サンドイッチ、朝食の定番メニュー、いろいろな具材を挟む」と書かれている。お客が2人いて私が外から勝手に写真を撮るものだから、慌てて出て行ったようにも見えた。誰もいなくなって店のおばちゃんが「どうするの?」と言いたげな顔で見ている。パンを指さし、人差し指を立てる。「一つください」の意味である。おばちゃん、少し笑顔になる。パンを一つ取り出しオーブンに入れ、フライパンに油を引き始めた。「ハングル?」と聞いてくる。「ノーノー、ジャパン」と答える。「???」分からないらしい。「トウキョウ」「オー」ようやく理解してくれた。理解すなわち笑顔である。器に卵を割り、掻き混ぜ始める。卵を少しフライパンに垂らし、火加減を見ているところは日本と同じである。流し込む。火を調節している。私の方を見て側にある椅子を指さし座れという。例のプラスチック製のやつである。初座りである。卵をひっくり返し折りたたみ、手際よくパンに挟み込んだ。その上に野菜を載せている。豚肉のようなものも挟んだ。掛けるタレを聞いてきた。ケチャップのようなものと、ドレッシングのようなものがある。ケチャップの方を指さした時、おばちゃんは笑った。なぜ笑うのだろう、意味が分からない。パンは一応出来上がったようだ。その時、おばちゃんが立ち上がり私を奥の方に連れて行こうとする。「???」なんだろう。奥に牛乳などが入ったガラス製のケースがあるのだ。そこに連れて行こうとしている。立ち上がって近づくと、ケースを開けて黄色い瓶を取り出した。これも一緒に買えと言っているのだろう。「オッケー」それはすぐに通じた。おばちゃん、ニコニコである。入り口に戻り、黄色い瓶とパンを持って横のテーブルに目線をやっている。ここで食べていくかと聞いているのだろう。「ノーノー」と右手を振る。すぐに理解したらしい。すぐにビニール袋を用意し、詰め込んでくれた。支払いである。ポケットから財布を出しドンを取り出した。いくらだか分からないのでおばちゃんにそのまま差し出すと、その中の一枚を取り出して自分のポケットからお札を出してお釣りをくれた。「カムオン」私がお礼を言うと「カムオン」とおばちゃん。店を出て振り向くと、右手を挙げて挨拶をしてくれた。ホテルに帰って確認すると黄色い飲み物はコーンスープのようなものであった。とても甘い飲み物だった。
                                 (平成29年作)

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素足

素足出す美女の素足のかたはらに



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ハロン湾のホテルに到着する手前のバスの中でフットマッサージに行くかどうかとハンさんに聞かれた。行くと答えたが、妻は行かないという。
「えっ、どうしたの?」
「いいの、あなただけで行ってきて」
珍しいこともあるものだと思ったが行きたくないというのだから仕方ない。Tさんは行くという。もちろん先生は行くわけがない。チェックインのあとすぐにロビーで待ち合わせ、バスでマッサージ屋まで連れて行ってもらった。1時間20ドル。女性がいいか男性がいいかと聞くので、もちろん女性をお願いした。部屋は3階にあり階段を上がった。ベッドが4台並んでいて案内が出て行ったのでTさんと二人で取り残されたようになった。このTさん、年の頃40代前半のようだが、上場会社の役員をしている。3年程前に前職に在職中にヘッドハンティングされ入社し、すぐに役員に抜擢されたという。バリバリのキャリアウーマンなのである。旦那さんはアメリカに単身赴任中で子供はいない。社長直結のポジションにいるらしく休みをもらっての旅行だという。仕事とプライベートをきちんと分けているらしくあまり多くを語らないが、ポツリポツリと話す言葉に凄い人であることが伝わってくる。「プレイングマネージャーのプレイングの方にウェイトを置きすぎていて、もう少しやりようを工夫しようと考えているところです」などと言っている。
しばらくして女性が2名入ってきた。大きなバケツを持ってきた。椅子になっている箱の蓋を開け、その中に所持品を入れろという。言葉は通じないが身振りで全て分かるのである。バケツの中には真っ黒いお湯が入っていて足を浸けてそこに座れという。私の後ろに回って肩を揉み始めた。
Tさんはというと、まずはジーパンを穿いているのが駄目だという。フットマッサージなので当然である。店に用意されたショートパンツがあるので、ここで着替えろと言われている。
「えっ、ここで?無理無理、この人とは他人だよ」と日本語で言っている。相当に慌てている。相手に全く通じていないのが私にも分かる。「他の部屋はないの?廊下でもいいよ」と更に言っている。担当の女性には通じない。バスタオルを持ち出して隠しておくのでこの場所で脱げと言っている。「もう、いい加減だなぁ」観念したらしい。赤い布を持つ闘牛士のような形にタオルを広げさせジーパンを脱いだようである。「大丈夫、大丈夫、見ていないから(笑)」とフォローするのが精一杯である。
肩、背中、腰と揉んでいき、仰向けに寝て足を擦り始める。気持ちいい。足裏など最高である。Tさんとほぼ同じことをしているらしく、「痛い、痛い、もう少し優しくやってよォ」と言っている部位が背中の辺りであり、足裏であることが分かる。美人の隣で痛がっている声を聞きながらマッサージを受けるのは妙に艶めかしいものである。90分コースでも良かったかなぁと思ったものである。
                                 (平成29年作)

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早桃

南国や伏目勝ちなる早桃売り



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翌朝も早く起き出してホテルの周りを歩きフォーを食べさせてくれる店に入ってみたりした。10時と少し遅めの時間にバスが迎えに来て、ホーチミン廟や一柱寺などの観光地を見て回った。昼もベトナム料理である。ハノイばかりでなくサイゴンビールなども飲んでみた。4人の会話もおよそ慣れてきて、先生を除く3人で普通に盛り上がりを見せてきた。
昼食後は4時間掛けてハロン湾に移動である。一杯飲んだ後なのでグッスリと眠ると思っていたが一向に眠くならない。あれこれとハンさんと話しながらベトナムの知識を蓄えていく。
「ベトナムの米作はタイに続く第2位となっています。主要産業です。年2回作っていますが3回作っている所もあります。コーヒーは輸出量世界1位です。」
「えっ、コーヒーはブラジルでしょ」
「いえいえ、お父さん、違いますよ。ベトナムが1位になっています。今とても力を入れています。設備投資をしたり、技術改良したりしてブラジルを抜きました」
ハンさんの国を思う気持ちは半端ではない。
「今、ベトナムには地下鉄がありません。だからバイクに乗るのです。しかし2030年に地下鉄が走ります。地下鉄が出来たらバイクは減ります。大きく環境が変わり国はますます成長します」
道端に何か果物を売っているのが見えた。
「あれは何ですか?」
「桃です。あの桃は食べてはいけません。全部、中国産です。あの桃は2、3ヶ月腐りません。炎天下の道端で売っていても、いつまでも色は変わりません。とても綺麗に見えますが恐ろしい食べ物です。凄い農薬や防腐剤、化学肥料を使って作っていますので、食べて10年もしたら確実にガンになります。中国産は恐ろしい。何でもお金になればいいと考える人達です」
「ヒエー、桃は不老長寿の食べ物のはずですが……」
「桃が全部ダメな訳ではありません。ベトナムの桃は小さいけれど安心して食べられて、とても美味しい」
写真はその翌日、また同じ道を帰って来た時にわざわざ車を停めてもらって写したものである。こちらを見ている男性が身動きもせずにいるのが少し不気味に思えた。
                                 (平成29年作)

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ビールの酔

噛み合はぬ思ひ飲み干すビールの酔



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さて、その日の夕食である。昼を食べたばかりなのにと思うほどに時間が早い。今回のツアーのテーマが「ベトナム料理と世界遺産を楽しむ旅」である。今度は4人掛けのテーブルに4人である。ぐっと距離が縮まった。ベトナムフレンチというので最初に出てきたのが写真のサラダである。私は変わらずのハノイビールで妻も女性も昼と同じものを注文していた。違うのは男性で椰子の実ジュースからハノイビールに変わった。
「あれっ、飲めるんだ!」
昼間の轍は踏むまいと全員に飲み物が届いた瞬間に乾杯をさせてもらった。それぞれの名前はさすがにバスの中で確認している。男性がHさんで、女性がTさんである。しばらくしてからHさんに質問をしてみた。
「失礼ですがご職業は何をされているのですか?」
「日本語教師です」
「えっ!先生ですか。日本語を教えるということは生徒さんは外人ですか?」
「そうです」
相変わらず先生の物言いは短い。(この時点から全員、Hさんを先生と呼び始めている)
「どこの国の人を教えているのですか?」
「いろいろです」
「たとえば?」
「中国、韓国、東南アジア、インド」
「凄いですね。先生は英語で教えるのですか?」
「日本語しか使いません」
「へぇ、教えづらいこともあるでしょうね」
「ほとんど問題はありません」
一挙に距離が縮まった気がしたが、それが勘違いであったことにすぐに気付かされた。それからの会話に全く入ってこないのである。何かを勧めた時のことである。「どうぞ、お構いなく」とピシャリとやられた。食事が喉に詰まるような気がした。フムフム、なるほど、そういうことか。相手がそういうことであればこちらもそうしなければならない。何となく分かり始めて来た。先生はその時から私の眼中から消えた。そういう人もいるのである。
その食事の場で先生よりもっと驚かされることになったのがTさんの方である。とても美人でとても聡明な話し方をする人ではあるが、それ以上に凄かったのはその経歴である。
「ええ~!スゴ~イ!凄すぎるジャン!」
                                 (平成29年作)

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夏負け

ベトナムを描きて夏負けとも見ゆる



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クルーズを終え、来た道を2時間掛けてまたハノイへと戻った。長い移動距離である。本を読むことも出来ずウトウトとするばかり。ハイさんもウトウトしているようなので話し掛けることも憚れる。車の運転を見ていると本当に荒っぽい。隙あらば追い越そう追い越そうとしている。日本では考えられないチェイサーゲームである。
市内に入り、まずは地元スーパーの見学である。なぜか予定に入っている。普通のスーパーマーケットで、必要なものがあれば買い物をしてくださいという。中を見ると日本のスーパーと何ら変わりがない。地元の人が普通に買い物カゴを提げて買い物している。なんでここがコースに組み込まれたのだろう。よく分からないまま何も買わずに出てきた。夕食まで時間があるので1時間ほどのフリータイムとなった。お土産でも見て回ることにして旧市街という雑踏の中を歩いてみた。いろいろな物が売られているが一つとして欲しい物がない。ほとんど物欲のない私なのである。その私が一つだけ足を止めた場所があった。油絵である(写真)。5坪位の狭い店に目一杯の絵を並べ、奥まった場所で男性が絵を描いていた。本当に描いているようである。男性が振り向かないので勝手に店内を見ていたが、店先に飾られた一枚の絵に釘付けとなった。一瞬で心奪われた。いい絵だなぁ。これを買って日本に持ち帰ることは出来るのだろうか。大きさも10号位なので丁度いい。いくらするのだろう。聞いてみようかな。
「これ、どう?良くない?」と妻に聞いてみた。
「買ってどうするの?自分で飾るの?お土産にしようなんて考えているんじゃないでしょうね。止めなさいよ。もらった人は迷惑なんだから」
結構きつい言い方である。昨年出掛けたイタリアで私が選んだお土産のことを言っているのである。自分の趣味で良かれと思って選んだベネチアのお面だが、誰からも賛同されることなく非難を浴びるだけの結果となってしまい、今回もまた同じ轍を踏むのではないかと反対しているのである。男性が振り向いて寄ってこようとしたが、時間がないので写真だけを撮って店を後にした。戻ってからハイさんに聞いてみた。
「油絵ですか。買った人を見たことありません。普通買うのは刺繍です。刺繍なら丸めて持ち帰れますので日本人に人気です。是非、刺繍をお勧めします。油絵はよくありません」
「ほらね」という顔の妻である。
その夜、ホテルに戻ってからスマホで調べてみた。「ハノイで油絵を買う」で検索してみるといくつかヒットするものがあった。「なるほど、なるほど」大丈夫そうである。写してきた画像を眺めながら買う決心を固めていった。いくらもしないだろう。5,000円位と目星を付けた。これを買わずに帰ったのでは後悔するかも知れないとまで思い始めていた。最終日にまた同じ場所に立ち寄ることになっている。妻が反対しても、ここは買うことにしよう。急に嬉しくなってきた。今回のベトナム旅行の思い出の品が手に入るのだから。
                                 (平成29年作)

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処暑

洞窟を抜けて湖面に処暑の風



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食事のあとに向かったのが世界遺産に登録された「チャンアンクルーズ」である。「陸の桂林」とも呼ばれているらしいが、桂林に行ったことがないのでその凄さが分からない。石灰石で出来た奇岩の洞窟を潜りながら4,5人乗りの手漕ぎボートで奥へ奥へと進んでいくとパンフレットに書かれている。楽しそうである。
舟は小さく、船頭さん含め5人で満席である。ライフジャケットを渡され着るように言われた。それでなくても暑くてたまらないところなのでしばらく着ないでいると、後ろに座った船頭さんから背中を突かれた。ここは譲れないところらしい。女性の船頭さんである。ゆっくりと船出した。クルーズの始まりである。風もなく穏やかで波もない。このようなクルーズ日和がまたとあろうか。舟はただただ静かに湖面を進むだけである。私の前に座る男性が水に手を差し伸べ、湖面すれすれまで生えている藻を引き抜いた。無口ではあるが何事にも興味を持つタイプらしい。写真を撮ったりしている。帰ってくる舟とすれ違う。みなジャケットを脱いでいる。私も脱ごうとするとまた背中を突かれる。やはり着ていなければならないらしい。途中、7、8艘の舟が集まって何かをやっている。撮影のようである。振り向いて船頭さんに「あれは何か?」と身振りしてみると、我々夫婦を指さして笑っている。「何だろう、意味が分からない」近づいてようやく分かった。花嫁花婿の撮影である。結婚式用の記念写真を撮っているようである。なぜ我々夫婦を指さしたかは分からないが、船頭さんの笑顔が見られたので上出来である。スマホを自撮りモードに反転させ、船頭さんの顔を入れてみると大笑いしている。現地の言葉なので分からないが、きっと恥ずかしがっているのだろう。親密モードになったところでジャケットに手を掛けると、やはり駄目だと背中を突かれる。
随分と進んできてようやく洞窟が見えてきた。湖面スレスレと見える狭い入り口である。前を進む舟が入っていくので間違いない。あそこへ入っていくのだ。入り口が近づいてきた。本当に狭そうである。入った。いきなり頭をぶつけそうになる。鍾乳洞が垂れている。いやに狭い。洞窟の中には所々ライトがあり照らされているので岩の高さは確認出来る。油断しない限りは大丈夫のようだ。しかし安心は出来ない。一つ目の洞窟を抜け静かな湖面に出て二つ目の洞窟へと入っていく。抜け出て湖面を進み三つ目に潜っていく。随分と時間が経ったようだ。長い旅である。1時間は経過しただろうか。
「いやに長いクルーズですね。まさか、これで半分なんていうことはないでしょうね(笑)」
誰にともなく話しかけてみたが、しばらくして前に座っている女性が答えてくれた。
「まだ本当に半分くらいのようですよ。約2時間のコースと書かれていますから(笑)」
「ヒエー、凄いですねぇ。帰ってくる舟と出会わないところを見ると最後の出口まで洞窟が続いている訳だ。こりゃ、世界遺産になるのは当然だなぁ」
しばらくして船頭さんが背中を突いてきた。何だろうと振り向くとジャケットを脱げという。「えっ?」まだ終わっていないジャン。向こうに洞窟が見えているジャン。どうして?とは思いつつも速攻脱いだことはもちろんである。全部で8カ所の洞窟を通り抜け、見覚えの場所に出てきた。見応えのある2時間だった。
「ありがとう、最高だったよ。カムオン、バイバイ」
ハイさんからはチップ一人1ドルと言われていたが、少し多めに払って舟を下りたことはもちろんである。
                                 (平成29年作)

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霍乱

このめまひ畢竟霍乱にはあらず



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ホアルーからすぐに昼食の店に向かった。車で20分程の距離である。中国風な建物で庭にはランタンが吊されていた。6人掛けのテーブルに4人でゆったりと座った。ハイさんが飲み物をどうするかと聞いてきた。ビールにどんな銘柄があるのか聞いてみた。
「まずはハノイビールでしょう。美味しいですよ。サイゴンビールもあります」
ハノイビールをお願いした。妻はハイネケンである。女性はソーダだという。飲まないらしい。男性はと見れば、じっとメニューを眺め、しばらくして椰子の実ジュースを注文している。この人も飲まないらしい。初めての顔合わせの場所ということになる。しっかり盛り上げなくてはならない。勝手にそう思い込んでしまうタイプの私である。ハイさんは飲み物の注文を終わると出て行った。1時間程したら戻るという。
初めにビールが運ばれてきた。もちろん、勝手に飲む訳にはいかない。全員の分が揃うまで待っている。次に女性のソーダが届いた。こちらも待っていてくれる。しばらく待たされた。ようやく男性の椰子の実ジュースが届いた。コップに入っているものと思いきや、椰子の実そのものにストローが差されているものである。これから料理が運ばれてくるというのに料理を置く場所もないほどの大きな椰子の実である。全員の分が揃った。ここは一言だろう。年長としての役割のような気がした。あとから妻に「話が長かった」と言われることのないように短くまとめることにした。
「えー、それでは……」
そう言いかけた時だった、男性が椰子の実ジュースを飲み始めているではないか。
「えっ!」
乾杯しなくていいの?ずっと待っていたのに。あなたのジュースを待って、みんなが我慢して待っていたというのに……。突然の出来事に面食らって、しどろもどろの挨拶になってしまったのは不覚であったが、それほどの驚きだったということである。
「……ま、まずは、乾杯!」
これほど間の抜けた挨拶をしたことがない。
「いやいや、よっぽど喉が渇いていたんですねぇ、よろしくお願いします(苦笑)」
それから約1時間のコース料理をどんな話をしながら食べたかを覚えていない。覚えていることといえば、男性が物も言わずに黙々と食べていたことである。フムフム、なるほど、なかなかの強者である。この旅行で4人揃って食事をする機会は6回ある。そのうちの1回目なのであと5回残されていることになる。心していかなければならないと思った。
写真はその時に出された揚げ物である。椰子の実ジュースの写真を撮りたかったが、さすがにそんな雰囲気ではない。
                                 (平成29年作)

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夏山

夏山に来て笠売りに囲まるる



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ホアルーに到着した。気温は37度を超えている。「帽子と水分補給だけはお願いします」とハンさん。30分ほど歩くという。全員、帽子を持っていると思ったが、一人だけ持っていない人がいた。男性である。この時点ではまだ名前も知らない。自己紹介、挨拶をするタイミングがないのだ。バスを降りるとすぐに帽子売りが寄ってきた。帽子というより笠である。帽子を被っている私にも寄ってくる。「ある、ある」と言って帽子を指さしてみても何とか買ってもらおうと必死である。男性の所へは二人掛かり三人掛かりで取り囲んでくる。それでも男性はいらないと言っている。しかし、ここは買っておいた方が良さそうな気がした。凄い日差しなのである。本当に日射病にもなりかねない。しかし男性は振り切った。日本から持ってきたと思われる小さな団扇を懸命に煽いで寺院の方へと向かったのである。
この場所には中国からの支配を脱し、初めてベトナム王朝を建国した初代皇帝と二代目皇帝が眠っていた。小さな霊廟だったが、ベトナム観光には欠かせない場所のようである。入り口に門柱が建っていた。龍の造形が施されていて立派なものである。
「龍は繁栄を意味します。この国の繁栄を願ってくれています。そのほか鳳凰は幸、亀は長寿、獅子は力を意味します。中国から来たものでしょう。長い間ベトナムは中国の支配を受けていました。柱には漢字が書かれています。しかし今のベトナムの人は勉強をしません。漢字を読める人はあまりいません。残念なことです」とハンさん。
中をお参りしてまた同じ道を戻ってきた。待っているのはまたまた笠売りである。この笠、ノンラーというらしい。ラタニアという木の葉で出来ていてベトナムの象徴のような存在である。よく映像で見たベトコン(南ベトナム解放民族戦線)はこのノンラーと黒い農民服を着ている。
今度は男性、いきなり買う様子である。この暑さに相当に参ったようである。なにせ、これからチャンアンクルーズが待っている。帽子無し笠無しでは耐えられるものではない。写真は交渉の結果、紙幣が受け渡される瞬間である。
「いくらで買いましたか?」
「1ドル」
「あれっ、さっきよりも安い。さっきの人は30,000ドンと言っていた。やりますねぇ(笑)」
10,000ドンが日本円50円である。30,000ドンなので約150円のところを1ドル100円で買った訳である。大幅なプライスダウンだが、30分を無帽で歩く辛さを考えれば、やはり早く買っておくべきだったような気がする。笠売りの商売がここでは成り立つことを目の当たりにした。
                                 (平成29年作)

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