2017年03月の記事 - ひこばえ
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ひこばえ


2017年03月の記事

凍ゆるむ

押さば押せ押せば土俵の凍ゆるむ



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朝稽古が見学できる相撲部屋を探そうとインターネットで調べてみると、荒汐部屋、八角部屋、東関部屋の名前が出てきた。それぞれ前日の午後に連絡をしてから来てくださいと書かれている。土曜日の夕方に電話を掛けてみた。孫のカズ君には翌日曜日に稽古を見に行くことを話している。まずは八角部屋に掛けてみた。すると「明日は稽古をやっていない」という。しかも見学するにはインターネットで申し込んで下さいという。まさかやっていないとは考えなかったので少し慌てた。次に荒汐部屋に掛けてみた。こちらはやっているという。「いつでもどうぞ」と言ってくれた。しかし稽古はガラス越しでの見学になるという。「ガラス越しかぁ。迫力に欠けるなぁ」
次に東関部屋に掛けてみた。時間帯が悪いのか繋がらない。夕方、ドタバタしていたのでそれっきり電話をするのを忘れていた。寝ようとして布団に入った時に思い出した。少し遅いが仕方ない。
「もしもし、東関部屋ですか……」
電話をして驚いたのは茶の間にいた妻である。寝るものだとばかり思っていた私が、いきなり大きな声で喋りだしたのだから「急に大きな声を出さないでよ。心臓に悪いわよ」と叱られてしまった。

翌朝8時半に家を出た。向かうは東関部屋である。電話応対の感じも良く、土俵のすぐそばで稽古を見せてもらえるという。9時20分に到着した。玄関ドアを押して入るも誰も出てこない。稽古場から声が聞こえる。まず私が入って稽古場の戸を細く開き、中を窺った。外人客が座っている。その向こうでこちらを振り向いたのが高見盛である。
「おっ、高見盛だ」今は髷を落としたので親方になっている。「なんだ?」というような目付きをして私を睨んだ。「スミマセン、昨日電話で予約しておいた者です。4人、大丈夫でしょうか?」すると高見盛、外人の座っている間の座布団を指差して目で合図する。「座れ」ということらしい。振り返って妻に「オッケー」の合図を送る。高見盛が無言なので、こちらもついつい無言になる。外人は全員女性で10人くらいいた。私達のために座布団を用意してくれたが「サンキュー」とも言えない。声を出してはいけない雰囲気なのである。妻は入ってきたが、カズ君が入って来ない。いきなりの裸の稽古風景に驚いたらしい。入りたがらないのを娘が無理やり抱っこして入ってきた。少しざわついた。高見盛が振り向いて「ちょっと、困るんだよなぁ」と低い声で注意する。「スミマセン」と娘。小さな座布団に座って見始めたが、ものの2、3分でカズ君が愚図つき始めた。途端に振り返る高見盛。目がキツイ。堪らずに娘は外に出る。我々もそれから10分程して外に出た。
「もう、雰囲気悪いよ。怖すぎだよ。あんなに睨まなくたっていいのにねぇ」と娘。
「集中して稽古しているから、ちょっとした物音でも怪我の元なんだよ、きっと」と私。
                                 (平成29年作)

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