2017年03月の記事 - ひこばえ
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ひこばえ


2017年03月の記事

冴返る

花道に消ゆる人影冴返る



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もりたなるお(作家、本名森田成男〈しげお〉)氏が亡くなった。享年90才。「昨年11月21日に肺炎で亡くなっていたことが分かった」と1月20日(金)の新聞に載っていた。折しも大相撲初場所は稀勢の里が初優勝を目前にし、もし優勝ならば19年振りの日本人横綱の誕生かと大賑わいの時である。「懐かしいなぁ」と思った。氏の作品を夢中になって読んだのはもう25年も前のことである。本は処分していてもう書棚にはない。もう一度読みたくなり、アマゾンで取り寄せることにした。

平成2年の暮れ、高田川部屋の餅つき大会に次女を連れて参加している。地元金沢区出身の十両力士「前進山」を応援してのものだった(写真)。その頃というのはちょうど貴花田が幕内に上がり、若貴ブームで大相撲がフィーバーしていた時である。次女はその時9才、小学校3年生である。相撲が始まるとテレビ中継で貴花田を応援したものである。横須賀の不入斗体育館で大相撲の巡業があるというので、前売券を買って二人で出掛けたのはその翌年のことである。おそらく春先であろう。若貴はもちろん、小錦や寺尾もいた。
帰りのバスでトラブルが発生した。娘を乗せ、私が乗り込んだところで小銭がないことに気付いた。運転手に聞くと釣り銭がないという。慌てた。
「ちょっと待っててください。そこの向かいの店で両替をしてきます」
そう言って一旦、バスを降りたのだ。そしてその店で何かを買っている所で、いきなりバスが発車してしまったのだ。
「えーっ!馬鹿野郎!娘が乗ってるんだ!」
何を買ったかは覚えていない。とにかく小銭を手に走った、走った。追い掛けた。バスの運転手は私一人だと思ったのかも知れない。いや、実際には娘がいることは分かっていたようだ。途中で停めて待っていてくれた。後ろの車を通そうとして走り出さなければならない道幅だったのかも知れない。いや、それにしても慌てた、慌てた。乗り込んで娘に詫び、運転手を怒鳴りつけた。家に帰って妻にその話をし、逆に叱られたことはもちろんである。あれからしばらくは娘もバスがトラウマになっていたかも知れない。忘れられない苦い思い出である。
その当時、もりたなるおさんの著書を片っ端から読んでいた。相撲界の裏側であったり、力士の悲哀が綴られていた。あれから25年である。訃報を前に自分も年を取ったことを思っていた。
                                 (平成29年作)

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