2014年03月の記事 - ひこばえ
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ひこばえ


2014年03月の記事

春潮

春潮の時に荒ぶや夫婦岩



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ツアーにはやたらとオプションが用意されたりするものだが、この旅では唯一、二見浦の夫婦岩の見学があるだけだった。妻は「どうする?」と聞きながらも「私はおかげ横丁を時間を掛けて歩きたい」と主張している。「折角、伊勢まで来て、有名な夫婦岩を見ないのは勿体ない」とここは強硬に言い張る。申し込んだ後でも「ただ岩があるだけだよ」などと言っている。

内宮からバスで30分程の距離である。聞くと、伊勢神宮に参拝する者は、まずこの二見浦で禊ぎを行うという古来からの慣わしがあるという。豊川稲荷より、こちらの方を本コースに入れるべきではないかと思ったが、それではオプションの追加料金が稼げない(笑)。
竜宮社や二見興玉神社などをお参りし、夫婦岩を拝む。
「春潮の夫婦岩」である。のんびりとたゆたう春の海に注連縄を渡した夫婦岩が仲良く並んでいる。理想の夫婦のようにも見える。とは言いながらも、時には波の荒ぶることもあるだろう。月並みな句とは思いつつも二見浦での思い出の一句とした。
                                 (平成26年作)



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東風

御幌を吹き上ぐ東風に畏めり



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初めての伊勢参りである。1日目を外宮、2日目を内宮へと回り参拝する。
ガイドなしのツアーなので、バスの中で添乗員からの簡単な説明を受けたあと、個人個人で自由に回ることになる。少々心許ない。もう少し、よく調べておくんだったと後悔しても始まらない。教わった通り、橋の右側左側に気を遣い、鳥居の前では立ち止まっての一礼。一の鳥居、二の鳥居とくぐってゆっくりと御正宮へと進んでいく。
御正殿は幾重にも垣が巡らされていて中を見ることは出来ない。門をくぐると、そのすぐ前に門があり、そこで参拝することになる。お願い事ではなく、日頃のご加護に感謝する場所だという。門に垂れている幕が吹き上がり、中が見えるが、さらに門があり塀が見えるばかりである。係員にあの幕は何というのかと聞くと「御幌(みとばり)」と教えてくれる。

伊勢神宮の正式名称は「神宮」である。全国に「神宮」の名の付くお社はたくさんあるが、「神宮」とのみ呼ばれるのは伊勢神宮だけである。国内で最も位の高いお社であることが分かる。日本民族の大御祖(おおみおや)の神である天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀り、その御食津神(みけつかみ)である豊受大神(とようけのおおみかみ)を祀る。
神々しい空気に包まれた御正宮の前に立った時、大勢の参拝客の中にありながらも、自ずと畏敬の念を深くしたものである。「畏(かしこ)まる」という言葉の意味を体現したように思えた。
                                 (平成26年作)



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囀り

囀りが神の森へと誘へり



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新幹線の中で思わぬ出会いがあった。
新横浜で乗り込み、豊橋で降りるまでの1時間、ビールを飲み、お握りを食べ、歳時記を開いたところで隣席の女性から声を掛けられる。「俳句を詠まれるのですか?」―――とても美しい方である。「はい、あまり上手くありませんが…」と答え、話が始まる。女性2人でツアーに参加していて2人とも俳句が趣味だという。窓側に座っている妻のことが妙に気になる。
東京の句会に所属しているそうで、俳句雑誌なども見せてもらう。俳句の話をしていると尽きることはない。すっかり意気投合してしまう。「春を探しに行く旅です」「お互い、いい春を見つけましょう」などと盛り上がったので、あとで妻からは「ナンパしているように見えたよ」と一言。「そ、そんなつもりは…」と口ごもる私。
お陰で2日間、とても楽しい旅が出来たのだが、お伊勢参りのことを「お蔭参り」というのはこんなことをいうのだろうかと、勝手な解釈をしてしまったものである。

写真は伊勢神宮外宮のお参りの前に入った写真館で撮った集合写真である。美人の2人連れが写っているのだが、お判りいただけるだろうか。
この句はその写真館を出て、ゆっくりと御正宮へと進んでいく時に詠んだものである。小鳥のさえずりが美しく聞こえていた。
                                 (平成26年作)




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穂の国に春を招くや狐塚



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20年に1度の式年遷宮を終えた伊勢神宮に初めてお参りしてきた。
新幹線とバスを使っての1泊2日のツアーである。
まず新幹線で豊橋駅に下車。駅構内に「ようこそ穂の国へ」のポスターが貼られている。「穂の国?三河の国なら分かるが、穂の国って聞いたことないね」などと言いながら、バスに乗り込み豊川稲荷へ向かう。
豊川稲荷へは2度目である。10年ほど前、車で浜名湖、伊良湖岬、日間賀島へと回った際に立ち寄っている。

豊川稲荷は正式名を「妙厳寺」といい、れっきとしたお寺である。境内に祀られている稲荷が有名なために広くそう呼ばれているという。本殿をお参りし、その奥の万燈堂や大黒堂を見て回る。その先の参道には千本のぼりが並んでいて、更にその奥に霊狐塚があり、赤い前掛けをしたたくさんの狐の石像が安置されている。
お稲荷さんといえば「初午(はつうま)」を思い浮かべる。2月の最初の午の日にその年の豊年を祈願するお祭りである。
この辺り一帯を「穂の国」稲穂の国と称したことと思い合わせ、狐塚を春の句として詠み、旅の始めとした。
                                 (平成26年作)



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佐保姫

佐保姫も羨む二人とぞ思ふ



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(承前)「花と竜」は作者火野葦平(1907~1960)が自分の両親について書いた実話小説である。
四国松山から出てきた父玉井金五郎と、広島の山奥から来た母マンさんとが、九州小倉(今の北九州市)で出会うところから物語は始まる。苦労しながら出世を重ね、ゴンゾ(石炭の沖仲仕業)の親分となっていくサクセスストーリーである。主人公は生涯をマンさん一人と決め、親分になってからも浮気をしなかったという任侠の人である。この「マンさん一人」というところがいい。

今からちょうど10年前の平成16年3月14日(日)の朝、一人でそのビデオを観ていた。見終わったところに、娘が彼氏を連れて来たのである。妻はすでに会っていたようであるが、私はその時が初対面であった。第一印象、とてもいい男である。初対面の挨拶を済ませたあと、彼が言ったひと言がとても爽快であった。
「緊張していますので、言わなければならないことを先に言わせてください。どうかお嬢さんと結婚させてください」
いきなり単刀直入に来たので、一瞬、見終わったばかりの健さんの切る仁義を思い出してしまった。こちらも健さんのようにカッコよくやれたかどうかは自信がない。

当然の流れとして、話は「花と竜」に及び「浮気をしない男の中の男」を語ったあと、1度しか観ていない大切なビデオをその場でプレゼント。初めて観た日が、手放す日となってしまった。
この絶妙なタイミングは、きっと若い二人のために神様が仕組んだ仕業に違いないと後々思ったものである。

(注)佐保姫とは春の野山の造化をつかさどる女神であり、春の季語となっている。
                                 (平成16年作)



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北窓を開く

北窓を開くや本の山越えて



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愛読書は何かと聞かれれば、まずは若松義人著「トヨタ式改善についての全著作」と答える。これは文字通り何度も何度も読み返し、今でも私の工場経営のバイブルとなっている本である。10年程前、たまたま手にした「トヨタ流改善力の鍛え方」を読んだ時の感動は今でも忘れられない。

次に浮かぶのが境野勝悟著「日本のこころの教育」である。これも何度も読み返し、大切と思う人に何冊もプレゼントした本である。私たちが毎日使っている「こんにちは」「さようなら」の意味、「お父さん」「お母さん」の由来などを教えてくれていて、たくさんの人に読んでもらいたいと思う本である。

3番目に挙げるのが、火野葦平著「花と竜」である。これも何度も読んだ。一度読み、しばらくしてまた読み、さらにまた読み返し、さすがに妻からは「同じ本ばかり読んでいるというのは、成長しないということだ」と手厳しくやられた本である。これは読むだけに止まらず、映画も観たいと思い、レンタルショップなど方々探し回り、ようやく通信販売でビデオを入手することとなった。昭和44年公開の東映映画であり、若かりし高倉健と星由里子の主演映画である。健さんのカッコの良さは今観ても惚れ惚れするほどである。
このビデオは苦労して入手したにも拘わらず、たった1度しか観ていない。それについては次のようなエピソードがある。(つづく)
                                 (平成23年作)




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鳥雲に

空仰ぐ癖いつよりか鳥雲に



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この句も出不精の句と同様、私の自画像である。
句会に出した時、「日向さんは北海道出身なので、北へ帰っていく渡り鳥を見ると故郷を思い出すんですね」と言われた。望郷の句と思われたようである。なるほど「鳥雲に入る」という季語は日本に渡来して越冬した渡り鳥が、春になって北方に帰っていく姿を言うのだから、そう捉えられても不思議ではない。
しかし、実はこの句は「鳥雲に」というより「空仰ぐ」の方に私の想いがあるのである。

出不精の句にあるようなズボラな一面のある一方で、神経質で繊細で折れやすい心の持ち主でもある。
時に悩み、時に苦しみ、どうしようもないほどに落ち込んでしまうような時もあり、それを「空仰ぐ癖」と表現してみたのである。俳句を始めた頃はこのような淋しい句をいくつも作っている。
いつも会社では大声で怒ったり、笑ったりする姿を見せているので、「俄には信じられない」という声がどこからか聞こえてきそうである。
                                 (平成11年作)




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