2014年02月の記事 - ひこばえ
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ひこばえ


2014年02月の記事

梅日和

出不精の出れば戻らぬ梅日和



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元来が出不精である。
まず、何かを計画するところからして億劫に思い、動こうとしないタイプである。
旅行などに出掛ける時も、大体が妻まかせであり、自分で計画することなどはほとんど無い。
行き先を決めるのも、宿を見つけるのも、レンタカーを借りるのもすべて妻であり、整うまではほとんど何もしない。

ところが一旦行き先が決まり、日が近づいてくると、俄然動き始める。
地図を見たり、資料を読んだり、あれこれ調べ始めたりして「○○だけは絶対に見ておきたい」などと言い出したりする。計画を変更するほうは大変である。「早く言ってよ」などと叱られたりする。

そして、旅に出て頭が俳句モードになってくると積極的行動派に変身するようで、歩き回り、見て回り、この頃は写真なども撮ったりして猛烈に楽しみ始める。「もっと早くそのモードになっておけばいいのに」と言われるのだが、なかなかどうして。
無精、ものぐさ、面倒臭がり―――このあたりが、私の本性のようである。
                                 (平成13年作)




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春の航

曳き船に引かれて果つる春の航



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横浜港到着予定時間は朝の10時であったが、ベイブリッジ手前の海上で減速したのは1時間半も前のことであった。
長旅なので早めに着いてしまったのだろうかと思ったが、そうではなく、それからタグボートに曳航され接岸までに相当の時間を要したのである。船の周りをカモメが舞うように飛び交い、しばらくすると海上に舞い降りて羽を休めている。そのカモメ達を飛び立たせたのがタグボートであった。

転舵して春のかもめを翔たせけり  虹洋

道川先生の句である。先生は日本郵船の船長を勤めた後、東京湾水先案内人としての仕事をしてきた。
この句を読んだ時、のんびりと浮かんでいるカモメの群れの方へ少し舵を切り、カモメ達を飛び立たせたという情景を私は想像した。しかし、飛鳥Ⅱを曳航するタグボートの働きを見た時、先生はきっとこの情景を詠んだに違いないと思ったのである。転舵反転という言葉もあるようだ。引いたり押したりする船の周りに大きな渦が出来、水しぶきが上がったりする。大きく向きを変えたりしながら、巧みに巨船を操っていく。まさに男の仕事である。
のんびりと浮かぶ「春のカモメ」と、それを飛び立たせる「力強い転舵」の対比を詠んだ句だったのだと思ったのである。
何事も実際の物を見ることの大切さを改めて知らされたような気がした。
                                 (平成26年作)


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下萌え

清正が功なる礎石下萌ゆる



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ボストン美術館を出て昼食を摂り、次は名古屋城へと向かった。
10年計画で進められている本丸御殿復元工事のうち、昨年完成した「玄関」と「表書院」が公開されていた。
鮮やかな色彩で描かれた障壁画や格天井、金色の飾り金具など豪華絢爛な御殿の内部を見学することが出来た。
時間の都合で天守閣に上ることは出来なかった。昨年9月に知人の案内で訪ねた時にも時間がなく、お堀端を車で回っただけだったので、天守閣に上るためにはもう一度来なくてはならないことになってしまった。

御殿を出て天守の方に向かう途中に「清正石(きよまさいし)」があった。大きな石である。
立て札に「名古屋城で最大の石垣石材。ここ本丸搦手枡型の石垣は黒田長政の担当であったが、巨石であるがゆえ普請の名手加藤清正が積み上げたと伝えられ、清正石と呼ばれてきた。」と書かれている。
幼い頃から秀吉に仕え、大名にまで出世してきた清正は、秀吉亡きあと家康に接近し、家康の養女を継室に迎えるなどしている。この仕事などにおいても相当の働きをしたことだろう。しかし、豊臣恩顧の有力大名という立場は微妙だったはずで、常に厳しい家康の警戒の目に曝されていたことは想像に難くない。名古屋城普請の翌年、熊本へと帰る途上で発病し50才で亡くなっている。家康による毒殺説もあるようで、このあたりについては諸説読み比べてみたいところである。
                                 (平成26年作)



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春めく

春めくや浮絵に見ゆる赤き帯



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名古屋港着岸後、観光バスで名古屋ボストン美術館に向かった。開催中の「葛飾北斎展」の見学である。
冨嶽三十六景などの代表作はじめ、約140点の浮世絵が展示されていた。
出掛ける前に、少し北斎について調べておいた。何事も前知識があると、より面白く鑑賞できるものである。
調べてみて驚いたのは、その膨大な作品の数である。生涯に3万点以上の作品を残している。そのような画業を収めることが出来たのは、北斎が長寿であったこと、そして一時も衰えることのない絵師としての心意気であろう。
75歳の時に出版された絵手本「富嶽百景」に北斎が書いた次のような跋文がある。
「己六才より物の形状を写の癖ありて五十才の頃よりしばしば画図を顕すといえども七十才前に描くところは実に取るに足るものなし。七十三才にしてやや禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり。故に八十六才にしてはますます進み、九十才にして尚その奥意を極め、百才にして正に神妙ならんか。百有十才にしては一点一格にして生けるが如くならん。願わくは長寿の君子、余が言の妄ならざるを見たもふべし。」
90才で奥意を極めると言い、さらに100才を超えても絵師として成長しようとする気概は凄まじい。

浮絵というのは、西洋の透視画法を応用し、誇張された奥行き感の中に像を浮き立たせるという技法である。
写真は吉原の遊郭の様子を5枚連作で描いた「吉原遊郭の景」(1811年作)という作品の左端2枚を撮したものである。
一回りして、私がもっとも春らしいと感じた作品である。
                                 (平成26年作)



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春コート

船旅や見紛ふ妻の春コート



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豪華客船「飛鳥Ⅱ」に乗り、横浜から名古屋までの2泊3日の旅を楽しんできた。
金曜日の午後4時に横浜港大桟橋を出航し、翌朝名古屋港に到着。一日、市内観光を行い、夕方再び乗船。日曜日の午前10時に横浜へ戻るというコースである。
乗船するとすぐさま7番デッキに集合のアナウンス。救命ボートの下で避難時の説明を受けた後、シャンパンと紙テープが配られ、桟橋に詰めかけた見送りの人たちに五色のテープを放る。出航の銅鑼が鳴り、バンド演奏が流れる中をゆっくりと船が桟橋を離れていく。走り始めてすぐにベイブリッジの下をくぐり、ランドマークタワーが瞬く間に小さくなっていく。

客室に戻り、しばらくすると妻の携帯に娘から電話が入った。家の窓から見ていると大きな白い船が横切っていくという。「あれが飛鳥Ⅱなのか」と聞いている。部屋のデッキに出てみると、なるほど、くっきりと浮かぶ富士山の下に夕なずむ横浜の丘陵が連なっているのが見える。ちょうど、会社のある金沢工業団地の沖合を走っているところであった。娘の家は少し前に過ぎたようである。すかさず、娘にメールを送る。
「高台のお前の家が見えるよ」
ちょっとした嘘。楽しい船旅の始まりである。
                                 (平成26年作)



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春光

映画館出て春光を眩しめり



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「永遠のゼロ」を観てきた。
泣かないだろうと思っていたが、始まってすぐに涙がこぼれた。隣で妻も泣いていた。
もう一人、私の隣に若い男の人がいて、初めのうちはポテトフライなどを食べていたが、そのうち泣き始めたようで食べる音もしなくなった。終わり頃には、声を殺して堪えている様子が伝わってきて、とても切ない状況になったものである。
原作を読んでから出掛けた。戦争物、特に特攻隊の話となると、少し敬遠したい気持ちもあったが、その前に読んだ「海賊とよばれた男」と同じ著者というので読んでみたのである。

結婚して間もない頃、夢中で太平洋戦争の本を読んだ。義父の戦争体験を聞くためにも、知らなければならないと思ったのである。そのお陰で、霞ヶ浦にも知覧にも興味をもって出掛けている。
「またあの特攻隊の話か」と思ったのである。しかし、実際に読み始めてみると、思っていたものと違う展開で話が進み、一挙に読み切ってしまった。内容が分かっているだけに、泣かないだろうと思って出掛けた映画館だったのだが……

映画館を出て、しばらく二人で歩いていたが、何か話そうとすると涙声になりそうである。
「岡田君、よかったね」と言うのが精一杯であった。
                                 (平成26年作)



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