動物 - ひこばえ
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ひこばえ


動物 カテゴリーの記事

蝦蛄

蝦蛄売の売れねば叩く桶のふち



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出船してすぐに我々の船に小舟が横付けされた。地元の漁師さんのようである。男性が乗り込んできて3つの桶を客室に運び込んできた。蝦蛄(しゃこ)とワタリガニと貝である。男性は一言も声を発しない。ただ、買ってくれという意思だけは伝わってくる。他の客も覗き込んできて「何だ、何だ」とやっている。ガイドさんが説明してくれる。これを買うと船で調理をして昼食に出してくれるという。しかし誰も買おうとしない。見ているだけである。すると男性はワタリガニを手に取った。カニはバタバタと手足を動かした。「こんなに元気だぞー」と言いたそうである。しかしそれを見ても誰も反応しない。次に蝦蛄を掴んだ。これまたピチピチと尻尾を振る。「これはどうだ!」と言いたげである。蝦蛄には卵が一杯詰まっている。しかしこれにも反応しない。男性はジッとしている。待っているだけである。周りを取り囲んでいた客が自分たちの席に戻り始めた段階で諦めたようである。急に立ち上がって桶を運び始めた。外で男性が何か言っているのが聞こえる。結構大きな声である。「全然、駄目だったよ」と言っているのだろう。小舟の女性が何か言っている。奥さんかも知れない。「ちゃんと、カニをバタバタさせてみせたの!」と言っているのかも知れない。男性は戻ってきて最後の桶を持ち上げてサッサと出て行った。
男性が去ってからのTさんの話である。
「ベトナム旅行3大買ってはいけない物の1つに蝦蛄を買うがあるんですよねぇ」
「なになに、どういうこと?」
「前にここに来た人が蝦蛄を買って調理を頼んだそうなんだけど、出てきた蝦蛄は泥臭くて食べられず、しかも卵はどこかへ行っちゃっていて最悪だったと言っていたので……」
「なるほど、なるほど。あと2つは?」
「今日これから行く水上人形劇の会場の前で売っている人形。思わず買いたくなるそうなんだけど、よく見ると粗悪品で本物とは似て非なるニセモノということ」
「へぇー」
「もう一つは?」
「ちょっと忘れてしまいました。思い出しましたらお伝えします(笑)」
旅行を終えた今でも、彼女からの3つ目は届いていない(笑)。
                                 (平成29年作)

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道をしへ

高みへとまた遠くへと道をしへ



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いきなり社長室に呼ばれたので戸惑った様子のK君だった。
「折り入って相談したいことがあって来てもらったんだが、あまり緊張しないで聞いてもらいたい。今、俺が倫理の会に入って勉強しているのは知っていると思う。活力朝礼を取り入れ、従業員のみんなが挨拶などしっかりと出来るようになり、会社も随分と変わったと思う。この素晴らしい倫理の教えをこれから社員の一人一人に深く学んでもらおうと考えている。俺一人じゃもったいないと思っている。ついては一年に一人ずつ、その会の研修会に出てもらって倫理を勉強してもらおうと思っているんだ。その初っ端を君にお願いしたいと思って来てもらったんだが、どうだろうか」
「どんな研修会なのですか?」
「この10月からスタートして、毎月1回ずつ一泊二日の泊り掛けで10回行うになっている。メンバーは各企業から1名ずつ出て十数名で行うことになると思う。詳細はまたパンフレットなどあると思うので見てもらうが受けてくれないだろうか」
「場所はどこでやるんですか?」
「湯河原で8回、富士山で1回、三重県の伊勢で1回」
「随分と遠いですねぇ。何を学ぶんですか?」
「人の道。人が最も大切にしなければならないものを学び、リーダーとしての心構えをしっかりと身に付けてもらうことになると思う。きっと君のためになり、それが遂には会社のためになると信じている」

「検討させて下さい」と言ってK君は出て行ったが、あまりに急な話で事情を理解していないかも知れないと思った。
「また明日、もう一度話をしなければならないようだなぁ」
                                 (平成29年作)

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紙魚

満州の山河を渉る紙魚ひとつ



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最近、倫理法人会の集まりで講話をすることが多くなった。先日も横須賀で話をしてきた。30名ほどの集まりだったが、まずまずの話だったと思う。その中に顔馴染みの田中さんが交じっていた。
私「お早うございます。今日はまたどうして?私の話は以前聴いてくれていますよね」
田中さん「日向さんの話は何度聴いても面白いんだよ。自分の体験に重なるところがあって、ついつい足が向いちゃうんだよ(笑)」
私「田中さんにそう言われると光栄です(笑)」
田中さん「船戸与一の残りを持って来たよ。まだ読み終えていないだろ?」
私「今、6巻目です」
田中さん「良かった。8巻目と9巻目、これで全部だよ」
私「有難うございます。感謝しています」
『満州国演義』全9巻(写真)の話である。
田中さん「実は日向さん、お願いがあって来たんだよ。私の担当している倫理塾に日向さんの会社から1名参加させてもらいたいんだけど、お願い出来ないだろうか。本当に素晴らしい勉強会だから、必ず会社のため、また本人のためになるので検討してもらいたいんだけど」
私「わぁー、ここで頼まれるかなぁ。田中さんに頼まれて断る勇気なんか私にはありませんよ(笑)。少し時間をください。考えてみます」
田中さん「ありがとう。本当にありがとう。やっぱり日向さんは素晴らしい人だ」

講話を終えて会社に戻る道すがら考えていた。
「確かに倫理を学ぶ若手社員が増えれば会社は変わっていくに違いない。倫理経営への基盤を築いていくために毎年1名ずつ受講してもらうというのもいい方法かも知れない。まずはやってみることだ。よし、やってみよう、決めた!」
前から考えていたことではあったが、きっかけがなかった。そのきっかけを田中さんが作ってくれたのである。会社に戻り、早速人選に取り掛かった。20代、30代の若手社員。まずは現場から出そう。しっかり趣旨を理解し、受け止めてくれそうな人。3、4人の候補を挙げてその中からK君に声を掛けてみることにした。工場長を呼び、話をし、すぐにK君を社長室に呼んだ。
                                 (平成29年作)

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金魚

早や知らぬ素振り金魚の名付け親



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鎌倉八幡宮にお参りに行き、境内の出店で孫のカズ君(4才)が金魚掬いをした。店のオヤジから受け取った紙の網をいきなり水に浸けたものだから1秒と持たない。1回300円。再びのチャレンジは娘が手を添えてやってみたが結果は同じである。しかし、よくしたもので掬えない場合は1回につき2匹の持ち帰りが出来るという。ビニール袋に水を入れ、出目金1匹と金魚3匹を大切に持ち帰ったのだった。家に帰って娘は水槽を用意し、ブクブクや砂や餌を買いに出掛け大わらわである。ご満悦のカズ君は4匹の金魚にそれぞれ名前を付けた。あまり難しい名前なので忘れてはいけないとメモ紙に書いて水槽に貼っておいた。その夜、3人娘が夕飯を食べに来た。それこそ大わらわである。

水槽の金魚を見ながらの私となっちゃんの会話である。私には少しだけお酒が入っている(笑)。
なつ「この黒いの、結構エサを食べるね」
私「あっ、なっちゃん、今、黒って言ったでしょ」
なつ「えっ、どうして?駄目なの?」
私「それは可哀そうだよ。この出目金には名前があるんだよ。名前があるのに黒なんて呼ばれたら悲しいよ。なっちゃんがひとみちゃんって呼ばれるみたいもんだよ。なっちゃんだって名前を間違えられたらイヤでしょ」
なつ「そりゃあ、イヤだけど……」
私「名前はカズ君がターコイズって付けたから、これからはターコイズって呼んでね」
なつ「変な名前(笑)」
私「しようがないよ。そういう名前にしちゃったんだから……」
しばらく、二人で餌を食べる様子を見ていた。
私「ホントだ。他の金魚に比べてこの黒いのは食欲があるなぁ」
なつ「あっ、おーちゃん、今、黒って言った!(笑)」
私「あっ、そうか。でもしょうがないよ、何んたって名前が難し過ぎるよ。なっちゃんだって何かを間違えることってあるでしょ」
なつ「ない、ない、名前は一度覚えたら絶対に間違えることはない。間違えたら可哀そうだよ(笑)」
                                 (平成29年作)

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囀り

囀りに一音高き声のあり



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1時ちょうどに入り、商談を終え会社を出たのが2時10分であった。2時50分の電車に乗ればいいのだから楽勝である。
「大丈夫だろう」
「はい、大丈夫です。30分には着きます」
車内であれこれ話しながら余裕を決め込んでいた。ところが大宮駅までの道路は一本道で何度も渋滞を繰り返す。どんどん時間は迫ってきて少し焦り始める。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫だとは思いますが、なにせ一車線ですから」
最後は駅の手前300メートルで車を降りることになり、急ぎ足で歩いたものである。駅構内に入りキョロキョロした。湘南新宿ラインの快速に乗るように言われている。
「あっ、これだ」
と思って降りたホームで待つこと5分。出発時間が迫って来るが、電光掲示板に一向に快速の案内が現れない。
「あれっ、間違えたかな?」側にいた駅員に聞いた。
「ああ、それは隣のホームです。もうすぐ電車が来ます。お急ぎください」
「ヒヤー!」
会社で印刷してもらった紙をよく読んでいなかった。見ると出発ホームの何番線まで書かれている。全く注意力不足である。そもそも意識がそこに行かないように出来ているのである。

何とか無事に南林間駅に辿り着き指導員の先生とも落ち合い、時間前に取引先に到着することが出来た。従業員の皆さんも待っていてくれた。
早速、活力朝礼の練習が始まった。やったことのない人ばかりだったので説明している間にも妙な緊張感が伝わってくる。何をさせられるのだろうかと不安に思っているようである。最初に手本を示した。姿勢の正し方、お辞儀の仕方、声の出し方、挨拶の仕方、本の持ち方などである。
「こんな感じで行います。これから皆さんにも同じことをやっていただきますのでマネをしてみて下さい」
全員にちょっとした余裕の表情が見られた。「ああ、こんなもの?」という感じである。初めのうちはぎこちなかった動作も繰り返すうちに覚えてくる。1時間ほどの練習で形が出来上がり、普通に大きな声が出始めた。
「簡単!これでいいんだ!出来る、出来る、これなら出来る!」という声が飛び出す。
いつも元気のない朝礼で困っていると話していた社長さんも嬉しそうである。
「どうなるかと心配していましたが、これなら大丈夫そうです。意外と簡単で安心しました。いい朝礼が出来そうです」と大喜びである。従業員の皆さんも喜んでくれて「こんなに簡単なものだと思いませんでした」と言ってくれた。
朝からいろいろあった一日だったが、埼玉でも座間でも感謝されることになり、ホッとした一日となったのである。
                                (平成29年作)

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