地理 - ひこばえ
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日向 亮司

Author:日向 亮司
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ひこばえ


地理 カテゴリーの記事

青田風

畦を抜け我が四肢を抜け青田風



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石屋の社長から送られてくる写真では文字の大きさや位置がいまいちピンと来ない。特に裏側は中央にある尾根が邪魔をしているようでバランスも何もあったものではない。しかもこちらから送った切り文字を石に貼り付けて写真を送ってくるだけなのでとてもアナログである。
私「普通は今どき、キャドか何かでやるだろう。イチイチ送った紙を貼り付けて、いいだ悪いだ言っているようじゃ、いつまで経っても決まらないぞ」
川上君「そうですね。現物を見ないでやり取りしていても一向に進みません。社長にまた行ってもらうことになりそうですが……」
私「また俺が行くの?面倒臭いよ」
川上君「いや、社長、それでないと決まらないと思います」
私「何か決める度に真鶴まで行かなくちゃならないとなると大変だよ」
川上君「まぁ、これ一回だと思います」
私「分かった。じゃ、明日でも行くか」
川上君「先方の都合を聞いてみます」
聞いた結果、1週間後の土曜日にしてくれという。
私「なんだって1週間も待たなくちゃならないんだ?すぐやればすぐ終わることじゃないか」
川上君「いや、社長、石を切る場所が違うようなんです」
私「どこ?」
川上君「茨城県の筑西市と言っています」
私「えっ、嘘だろ?」
川上君「本当です。そこで土曜日に待ち合わせて全部決めたいと言っています」
筑西市とは先日行った結城市の隣町である(令和2年4月28日、ひこばえ「涅槃吹く」)。
遠い。抑々どうしてそんな遠くまで石を運ばなくてはならないのだろう。真鶴の石切り場で見たあの石が筑波山の麓まで運ばれていると思うと情けないような気もして来る。
私「石を切る機械を持ってないのか?」
川上君「そうらしいんです」
私「どうなってるんだろ。石の仕入れから加工まで全部自分のところでやっているということじゃなかったっけ。石が大き過ぎて切れないというんだろうか。まぁいいか。行くか。真鶴に行くのも筑波山に行くのも同じようなものだからな。行かなければ決まらないというんじゃ行くしかないか。了解。分かった。行くと伝えてくれ」
(注)写真は出掛けた日の筑波山遠景である。
                                 (令和2年作)




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山滴る

この石と決めて滴る山にあり



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コロナ対策で外出規制が叫ばれている中での遠出である。逗子から鎌倉、湘南と走り、西湘バイパスで小田原、真鶴と向かうコースである。いつもは渋滞する場所もスムーズに抜けて予定より早く到着したが、途中電話を入れていたのでピッタリと社長さんと落ち合うことが出来た。挨拶もそこそこに石切り場に案内してくれるという。社長さんに先導されて山へと向かった。見ると石屋さんの多いこと。至るところに石材店があり、本小松石と思われる石がゴロゴロしている。普段は意識したことのない石が矢鱈と目に付く。真鶴は石の町である。
道はいきなり脇道へと入った。急な上りである。大型のダンプともすれ違う。道の脇に切り出した本小松石が転がっている。グングンと進み、漸く目的地に到着した。早速、名刺交換をして現地を見て回ることになった。
社長「石はこの山の裏手で切り出してきます。持って来た石は使い道に応じて加工します。向こうにあるのは石積み用のものです。その向こうは庭石などに使われます。今回、見てもらうのはこちらです。いいのがありましたら声を掛けてください」
<フムフム、この中から選べばいいんだな>
私と工場長と川上君である。湯河原石材の社長とこの石切り場を管理している男性と見て回った。
社長「これなんかはどうでしょうか。大きさはちょうどいいと思うんですが……」
私「図面は持って来たか」
川上君「持って来ました。上に載る石が大体横1.6メートル、高さ1メートルです」
社長「こちらの石も形がいいと思うんですが……」
石があちこちに転がっているので、どれがいいと言われても本当にいいんだかどうだかの見当が付かない。
私「これを上に載せるとしたら、下はどんな石にするんですか?」
社長「平らでしたら加工はいくらでも出来ますから大丈夫です」
1つの石が目に入った(写真)。
社長「これなんかはどうですか。この石一つで大丈夫ですよ」
私「おお、これはいいなぁ。一枚かぁ」
社長「これは迫力ありますよ」
私「蔦なんか這っていて相当前から置かれている感じだなぁ」
社長「5、6年も前からここに置いてあります」
私「なんで売れないんだろ?」
社長「待っててくれたのかも知れません」
私「フムフム」
その後もショベルカーであちこちの石をどけたり取り出したりしてくれたが、結局はこの石に敵うものはなかったようである。石の裏側がよく見えなかったが、表が勝負である。
私「よし、これにしよう。決めた。これで行く!」
                                 (令和2年作)




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末黒野

末黒野になどて一叢焼け残る



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翌朝は早目に起きていつものように一人で散歩に出掛けた。車で渡良瀬川沿いを訪ねたのである。まずは雀神社。その横の土手の上に田中正造の顕彰碑が立っているのである。ランニングの人が時折通るだけである。前日、記念館で聞いた話を思い浮かべながら碑の前に立った。「田中正造翁遺徳之賛碑」と書かれ、正造が明治天皇に対し書状を持って直訴する場面を描いたレリーフが彫られている。土手の向こうの渡良瀬川は見えるようで見えない。ゴルフ場が邪魔をしているのである。成るようで成らなかった正造の想いとどこか通ずるような気がした。
少し離れた場所に「まくらが」の碑が建っていた。万葉和歌である。
「まくらがの古河の渡りの唐梶の音高しもな寝なし子ゆえに」
意味は「いまだ誰とも係わりを持ったことのない女性なのに、ウワサばかりが高くなって困る」というものである。「まくらが(枕香)」は古河に係る枕詞であり、古河は「許我」と書かれているが「滸」であり「川のほとり」「水辺に船をすすめる」という意味がある。
車を移動して「古河城本丸跡」の碑を探した。<このあたりだろう>と見当を付けた場所に車を停めて土手を登ると5メートルと離れていない場所に出たので驚いたものである。碑の前に立って説明文を読んでいると真上でヒバリが囀っている。
<チュルル、チュルチュルチュル、ピー、チュクチュク、チュルチュルチュル……>
ずっと同じ場所に留まっている。少し位置を変える。囀りは同じである。急に声が止み、急降下した。目の前の土手に下りた。ヒバリは警戒して自分の巣から離れた場所に下りると聞いたことがあった。降りた場所を見ていたが動くものは見えない。しばらくして下りた辺りに巣がないかと歩いてみると、およそ離れた場所から2羽が飛び立った。
写真で見ていた木製の碑と違うものが建っていた。立派になっていた。いつまでもヒバリが囀る土手であって欲しいと思った。

ホテルをゆっくりとした時間に出て、前日最初に訪ねた「生井の桜堤」を再び訪ねてみた。焼け跡を見たかったのである。「末黒野」「末黒葦」などの季語がある。一句、詠んでおきたかったのである。到着すると係の人がいて土手の下に降りるのを防いで三角コーンを立てていた。
私「下りちゃ駄目なんですか?」
係員「はい、申し訳ありません。まだ火が消えていないので立入禁止にさせてもらいます」
確かにまだ火が燻ぶっている場所がある。白煙が立っているのである。やむを得ない、係員のいない場所に移動するしかない。車に戻って100メートルほど移動した。すると係員も移動して来てまた三角コーンを立てているのである。
<しょうがないなぁ……>
私「土手の向こうまで歩いてこよう」
妻「いいよ」
200メートルくらい先に下りる場所があることを前日歩いていて知っていた。さすがにそこまでは追って来ない。煙も立っていない。思い通りの一枚(写真)を手にして次の目的地「結城市」に向かうことにした。
                                 (令和2年作)




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春の川

渡良瀬の昔を今に春の川



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「生井の桜堤」から「茂林寺」までは所用時間40分である。分福茶釜の話などをしながら走っていたが、途中でカーナビの画面の片隅に気になる文字を見つけた。
私「ワワワワワッ、ストップ、ストップ、ストップ」
妻「どうしたの、急に?」
私「まずはそこの駐車場に入れよう」
妻「どうしたのよ」
私「田中正造記念館があった。忘れていた。去年、足尾銅山に行った時に遠くて寄れなかったんだけど、ここだった。行ってみよう」
正式名称「足尾鉱毒事件田中正造記念館」。群馬県館林大手町6-50。茂林寺まであと5分という距離である。青い幟が2本立っていた。立派な門をくぐり、民家のような建物の戸を開いた。
私「スミマセン。どなたか、いらっしゃいますか?」
奥から女性が現れた。
私「中を見学してもよろしいでしょうか?」
女性「どうぞ、お上がりください。お二人ですか。よろしければこちらにお名前を記入していただきたいのですが……ありがとうございます。このご時世ですのでお話しするのも何なのですが、館内の説明はいかがいたしますか?よろしければ私がご案内いたしますが……」
コロナウイルスのことを言っているらしい。
私「是非お願いします」
女性「お時間は大丈夫ですか?」
私「大丈夫です」
時計を見た。10時15分である。話は足尾銅山の煙害から始まった。昨年、見学してきたばかりである(令和元年9月18日、ひこばえ「山滴る」)。しかし訪ねたことは伏せておいた。観光地と化した銅山のトロッコ電車に乗った話とこれから始まる鉱毒事件の話は似つかわしくない。渡良瀬川の魚が死に、穀倉地帯の農産物が汚染され、人体に影響が及ぶ話である。下流に住む人々に健康被害が出て、人の命が損なわれていく。田中正造が登場する前の話が蜿蜒と続く。そこが大切な話なのである。健康被害ばかりでなく食べ物もなくなり飢えに苦しみ、上に訴えるも相手にされず苦しみ抜いて行く。被害民への暴力、拘留、国の無力を訴えていく。ようやく最後あたりに田中正造が登場する。天皇陛下への直訴、極貧、胃がん、死。一通りの話が終わって11時15分になっていた。ちょうど1時間である。女性には本当に丁寧な説明をしてもらった。入場料無料でガイド料も無料である。「もしよろしければ、最後にお気持ちでも……」と最初に言われている。こんなに丁寧な説明を受けたのである。もちろん幾許かを置いていかなければならない。財布を見るとたまたま1万円札しか入っていない。小銭もない。
私「お前はいくら持ってるの?生憎、財布に万札しか入っていない」
妻「えっ、私の財布は車の中だよ。持って来ていないよ」
私「ええっ、この場合お釣りは貰いにくいよ」
妻「そうよねぇ」
私「いいや、1万円を置いていく」
妻「えっ……」
結局は田中正造の伝記をビデオ化したCD「赤貧洗うがごとき」(定価3500円)を買い、5000円を取ってもらうことにした。「こんなに頂戴しては……」と恐縮していたが、とてもとても恐縮されるような金額ではない。貴重な話を聞かせてもらった上に帰ってからの楽しみも増えることになったのである。予定していなかっただけにとても得をした気分になっていた。
                                 (令和2年作)




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春山

春山に御廟といふも穴一つ



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瑞泉寺に行った抑々の目的が初代関東公方足利基氏公の墓にお参りすることだった。瑞泉寺中興の祖であり、歴代の公方の墓も祀られている。庭園内を一回りしたあと墓のある場所を確かめようと山門まで戻った。山門の横に見取り図のような絵看板が立てられていたからである(写真)。ペンキで書かれた絵のようで全体に色褪せているが、よく見れば読めるようにはなっている。本堂、方丈、庫裡とあり、その右側の山のように描かれた場所に「開基足利基氏公廟所」と書かれている。
<どうやって行くのだろう?>
道があるようには見えない。庫裡で聞いてみようと思い、再び山門をくぐった。
「スミマセ~ン」
すぐに女性が出てきた。着物姿である。
「ご朱印帳ですか?」
「いえ、ご朱印ではありません。この裏にある基氏公のお墓にはどうやって行くのかと思いまして……」
「ああ、あいにく公開はしてないんですよ」
「えっ、見られないんですか?」
「はい、すみませんが……」
「写真なんかもないんですか?」
「はい、ありません」
ムムムム……折角来たというのに入れないようである。残念と言うしかない。
山を降りて再び総門のところに戻って来た。先程の男性と目が合った。
「ありがとうございました」
「結構、花、咲いてたでしょ」
「花はいいんですけど、見たかった基氏公の墓が見られなくってガッカリでしたよ」
「ああ、あそこはダメなんだよ」
「そこが見たいトコなんですよね(笑)」
「なんも、小さな穴倉の中に祠があるだけだよ」
「ホコラ?」
「祠っていうか、何ていうか、石を3つ4つ積み上げていて……」
「ああ、石塔だぁ。なるほど……」
見たことのある人には、特段何んということもない物のようである。しかし見ていない者には「一度でいいから……」という思いがある。何となく想像は出来たがあくまでもそれは想像に過ぎない。百聞は一見に如かず。心残りである。お礼を言って瑞泉寺を後にした。鎌倉宮の近くの蕎麦屋で十割蕎麦を啜って12時半には家に戻っていた。
                                 (令和2年作)




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