地理 - ひこばえ
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ひこばえ


地理 カテゴリーの記事

凍ゆるむ

押さば押せ押せば土俵の凍ゆるむ



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朝稽古が見学できる相撲部屋を探そうとインターネットで調べてみると、荒汐部屋、八角部屋、東関部屋の名前が出てきた。それぞれ前日の午後に連絡をしてから来てくださいと書かれている。土曜日の夕方に電話を掛けてみた。孫のカズ君には翌日曜日に稽古を見に行くことを話している。まずは八角部屋に掛けてみた。すると「明日は稽古をやっていない」という。しかも見学するにはインターネットで申し込んで下さいという。まさかやっていないとは考えなかったので少し慌てた。次に荒汐部屋に掛けてみた。こちらはやっているという。「いつでもどうぞ」と言ってくれた。しかし稽古はガラス越しでの見学になるという。「ガラス越しかぁ。迫力に欠けるなぁ」
次に東関部屋に掛けてみた。時間帯が悪いのか繋がらない。夕方、ドタバタしていたのでそれっきり電話をするのを忘れていた。寝ようとして布団に入った時に思い出した。少し遅いが仕方ない。
「もしもし、東関部屋ですか……」
電話をして驚いたのは茶の間にいた妻である。寝るものだとばかり思っていた私が、いきなり大きな声で喋りだしたのだから「急に大きな声を出さないでよ。心臓に悪いわよ」と叱られてしまった。

翌朝8時半に家を出た。向かうは東関部屋である。電話応対の感じも良く、土俵のすぐそばで稽古を見せてもらえるという。9時20分に到着した。玄関ドアを押して入るも誰も出てこない。稽古場から声が聞こえる。まず私が入って稽古場の戸を細く開き、中を窺った。外人客が座っている。その向こうでこちらを振り向いたのが高見盛である。
「おっ、高見盛だ」今は髷を落としたので親方になっている。「なんだ?」というような目付きをして私を睨んだ。「スミマセン、昨日電話で予約しておいた者です。4人、大丈夫でしょうか?」すると高見盛、外人の座っている間の座布団を指差して目で合図する。「座れ」ということらしい。振り返って妻に「オッケー」の合図を送る。高見盛が無言なので、こちらもついつい無言になる。外人は全員女性で10人くらいいた。私達のために座布団を用意してくれたが「サンキュー」とも言えない。声を出してはいけない雰囲気なのである。妻は入ってきたが、カズ君が入って来ない。いきなりの裸の稽古風景に驚いたらしい。入りたがらないのを娘が無理やり抱っこして入ってきた。少しざわついた。高見盛が振り向いて「ちょっと、困るんだよなぁ」と低い声で注意する。「スミマセン」と娘。小さな座布団に座って見始めたが、ものの2、3分でカズ君が愚図つき始めた。途端に振り返る高見盛。目がキツイ。堪らずに娘は外に出る。我々もそれから10分程して外に出た。
「もう、雰囲気悪いよ。怖すぎだよ。あんなに睨まなくたっていいのにねぇ」と娘。
「集中して稽古しているから、ちょっとした物音でも怪我の元なんだよ、きっと」と私。
                                 (平成29年作)

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行く秋

行く秋や山下りてはや山を恋ふ



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車を停めた場所に戻ったのが2時である。山小屋を出発したのが10時半なので、実に3時間半歩いていたことになる。小丸尾根を下りれば1時間と思っていたので、どこでこんなに時間が掛かったのか時計を見て驚いたものである。すぐさま温泉に向かった。秦野の「湯花楽」、ここだけは事前に調べておいた。もちろんジェットバスも完備されている。約1時間の温泉タイムで疲れを癒し、東名の渋滞に掴まりながらも無事に帰宅したのが5時半、朝の5時半出発から丸12時間の旅だったことになる。

ここで、今回の鍋割山登山での教訓をまとめておこう。
① 「地図は最新版を用意しよう」
実は今回使用した「クルマで行く山歩き(関東周辺)」は10年前に大菩薩峠に行った時に買ったもので、2007年版のものである。小丸コースが閉鎖されていることも駐車場が「二俣」まで行けないことも書かれていない。情報は最新版で確認しておかなければならない。
② 「電子辞書は持参しよう」
スマホの通じない場所があることが分かった。調べたい物が調べられない苦痛は予想外に大きい。それは時として山登りの苦痛より大きく感じたりするものだ。少々荷物にはなるが、これからは電子辞書を持参することにしよう。
③ 「山登りの小説は読んでおこう」
あまりにも山の怖さを知らな過ぎたようだ。経験する前に知識だけは得ておこう。立ち入り禁止区域に入り込むなどという初歩的なミスをそこでは教えてくれるに違いない。もちろん、シャーロックホームズは必読である。いざと言う時のために推理力を養っておかなければならないことは言うまでもない。
④ 「妻を大切にしよう」
一歩間違えれば山岳救助隊という騒ぎにもなりかねない事態に巻き込んでしまった罪は大きい。相当に不安だっただろうに、一言も責めることなく付き合ってくれたのには感謝の言葉もない。これからの山歩きはもちろんだが、日常生活においてもしっかりと良きパートナーとして歩んでいけるよう愛情一杯で接していきたい。もちろん、ストックの10本や20本、次回登る山の選定権など言を俟たない。
                                 (平成28年作)

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野山の錦

まだ歩き足らぬ野山の錦かな



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うどんを食べていると隣の人の会話が耳に入ってきた。
「小丸尾根のコースは工事中で通れないんだって。今来た道を戻るしかないみたい」
工事中?なんの話だろう?今来た道を戻る?それでは面白くないなぁ。
食べ終わって情報を得に、その辺りをぶらついてみると看板が出ていた。森林伐採工事で8月4日から通行不可になっているというのだ。「ああそうか、だから来る途中の左回りコースの入り口が分からなかったのだな」と得心した。何人かが同じく看板を見に来た。それでも進もうとする人がいる。
「あのォ、通行止めじゃないですか?」
「いつも通っているから大丈夫ですよ」
男性3名が当然のように下りて行った。「そうか、大丈夫か」と思ってしまった。
戻って妻にその話をした。
「同じコースを戻っても仕様がないよ。通行止めとは言っているけど、みんな行くみたいだからそっちの方がいいんじゃない?」
「いいよ、どっちでも」
ということで、予定通り「小丸」の先の「二俣分岐」を目指し、分岐から一気に「二俣」へと降りるコースを選んだのである。写真の地図では「訓練所尾根」と記されている。出発は10時半だった。道は最初の下りを終え、徐々に上りへと変わって行った。あまり人はいない。軽い尾根伝いを想像していたが、すでに3時間歩いてきた我々にはハード過ぎる上りとなっていた。
「どこまで行くの?」
「もうすぐだよ」
「戻るのだったら、今だよ」
「いや、どうせだから小丸までは行ってみようよ」
そして、とうとう小丸の先の二俣分岐に到着した。ロープが張られていた。通行止め。事故が起きても責任は持てない旨が書かれている。
「……」
「……」
「行こう。1時間15分で下りられる。尾根伝いだから早いよ。今来た道を戻ったら上りありの2時間だよ」
「そうね」
「慌てずに行けば大丈夫だよ、ゆっくり下りて行こう」
                                 (平成28年作)

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秋の山

崖下に迫る民家や秋の山



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阿字ヶ池に架かる反り橋と平橋を渡り、正面の本堂、釈迦堂、鐘楼の前を通り、すぐさま裏山ハイキングコースへと入って行った。コースは二手に分かれていた。いきなりコース中央を目指す道もあったが、あえて遠回りして最初の入口から入る道を選んだ。民家の横を通り、上り口に向かった。道は整備されていた。筑波山のような木の根っこだらけ、石ころだらけのようなことはなさそうである。「チチチチチチチ……」と鳥の騒ぐ声ばかりが聞こえる。「鳥語こぼるる」とでも言うのだろうか。山里を離れて急に静かな異空間に入り込んだような気がした。
「大丈夫か?」
「大丈夫……」
筑波山を上った経験は私をプロ登山家にしている。山歩きが初めての妻を気遣う余裕さえある。一気に上り切って散策路のような道に変わった。少し呼吸を整える。早朝ウォーキング連続90日の私でさえ、少し乱れた息遣いである。妻は相当に苦しいに違いない。
「大丈夫か?」
「大丈夫だってば……」
意外と平気そうである。いやに頑張っているなぁと思いながらも、もう歩きたくないと言われるよりはマシである。黙々と上がり下がりを繰り返して最初の休憩所まで辿り着いた。そこで聞いた訳ではない。聞かされたのは帰りの車の中である。実は妻もウォーキングを始めていたのである。「始めようかな」と言っていたのは聞いていたが「始めた」とは聞いていなかったので聞かされた時は驚きであった。しかも随分と科学的なことを言う。
「歩いているのは貴方とは違うコース。広場を横切って、階段を下り、左に曲って階段を上る。そこを右に行って、そこの階段を下りる。またその階段を上り、〇〇団地のところへ出る……(略)」
「凄い距離だなぁ。30分じゃ、歩けないだろ?しかも階段が多い」
「大体50分は掛かる。脂肪の燃焼が始まるのは歩き始めて40分経ってからというから、効果のあるのは10分程度なのよねぇ。だからあと10分は距離を延ばそうかと思っている」
「道理で腹が全然引っ込まない訳だよなぁ。40分も歩かないと駄目なの?俺の25分では脂肪は減らないってことか?」
「そう、短かすぎ。効果なし。それから歩いている間の呼吸の仕方も大切だよ。鼻から吸って、口から吐く」
「えっ、考えたこともない……」
いつの間にか、妻はウォーキングのコーチになっていた。自称プロ登山家が一気に崖下に突き落とされた瞬間だった。山道を歩きながら一向にスピードが落ちず、私より前を歩いていた(写真)。その訳がようやく分かったのである。相手がその気ならとファイトを燃やしたことは勿論である。よし、それなら筑波山クラスの山に挑戦だ!
                                 (平成28年作)

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秋の池

反り橋の褪せし朱色や秋の池



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参道を行くと仁王門にぶつかる。正面から写真を撮り、近づいて金網越しに左右の金剛力士像の姿をカメラに収めた。今から700年も前に作られた像というのだから立派なものである。その横にボランティアガイドの人が4、5人屯していた。普段なら話し掛けて案内などを頼むところなのだが、今日は目的をウォーキングに置いているので素通りである。頼んだりすると、やる気を出している妻の気勢を削ぐことにもなりかねない。要注意である。しかし、向こうから寄ってきてパンフレットを手渡された。お礼を言ったことは勿論であるが、そのついでに「ガイドをお願いします」と言ってしまいそうな自分を抑えるのに必死であった(笑)。
門を回って最初に目にするのが阿字ヶ池に架かる朱塗りの反り橋である。見た瞬間「あっ!」と驚いた。随分と色が褪せていたのである。以前来たのは、いつだっただろうか。子供たちが小さかったことだけは確かである。あの時は鮮やかな赤で極楽浄土を思わせる華やかさだったのだが……。随分と劣化しやすい塗料を使ったものである。塗り替えの予算が付かないのだろうか。この褪せた色合いをもって浄土庭園と称していいのだろうか。なんとも意外なものを見せられた思いがしたものである。妻も感じていたようで、その後に金沢文庫を訪ねた時に建物の様子が変わったことに驚き、あれはいつだっただろうかと同じようなことを呟くのである。もうかれこれ30年は経とうか。随分と遠い昔のように感じられる。
「帰来草」の突飛なタイムスリップに驚いたのは事実だが、考えてみれば我々も常にタイムスリップを願っているのではないだろうか。30年前といえば私が32才で妻が27才。娘達も6才と4才である。あの時に帰ることが出来ないのはもちろんであるが、あの頃の4人の姿を空の上からでも眺めてみたいと思ったものである。
いただいたパンフレットの中に「浄土庭園」のことは次のように説明されていた。
「浄土の世界をこの世に再現しようとした庭園様式。阿字ヶ池を中心に此岸と中之島を結ぶ反り橋は過去から現在までの苦労を表し、中之島から平橋は仏の教えを守れば彼岸(弥勒浄土)に安らかに行けることを示しています」
                                 (平成28年作)

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