時候 - ひこばえ
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ひこばえ


時候 カテゴリーの記事

夏果て

夏果ての悲しき民の絵と思ふ



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「生憎ですが機内からは連絡できないことになっております。成田空港の手荷物受け取り場所の近くにJALのカウンターがございます。そちらで問い合わせていただくことになります」スチュワーデスさんは即答してくれた。
「きっと見つかるでしょう」とも添えてくれた。笑顔での一言は心に染みるものである。安心して熟睡し朝を迎えることが出来た。
到着し空港の手荷物受け取り場所でさっそく係員に聞いてみた。最初は要領を得なかったがいろいろと調べてくれてJALのカウンターまで連れて行ってくれた。あとはスムーズである。事情を聞かれ、必要書類を作り、「見つからないこともあることだけはご理解下さい」と言われ、あとは待つだけという状態を作ってくれた。
家に帰ったのは日曜日である。さすがにその日は疲れていたようでウツラウツラして過ごしたが、翌日にはこのブログをパソコンに打ち込み始めていた。2日間で20のブログを書き終えた。忘れないうちに終わらせておこうである。
月曜日の昼にJALの女性から電話が入った。品物はもう成田に届き、明日には届けることが可能だという。
「申し訳ございませんが、ご自宅までの送料はご負担いただくことになりますがよろしいでしょうか?」と言う。もちろんである。
「ハノイからの送料はいいのですか?」
「もちろん必要ございません」
素晴らしい対応である。ハノイのラウンジで保管してくれていたことも、即日成田行きに載せてくれたことも、連絡の迅速さにも感謝、感謝である。
翌日の午前中に丁寧に梱包されて届けられた。1ヶ月半にも亘り続けてきたベトナム旅行記の最後はこの絵の写真である。ノンラーを被った6人のベトナム人が描かれている。この絵を見るたびに思い出すだろう。楽しかった4泊5日の旅行記をこれで終えることとする。
                                 (平成29年作)

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夏終る

夏終るロビーに忘れ物一つ



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買った絵を大切に抱えながら伝統芸能である「水上人形劇」を見、最後の夕食を済ませ空港に到着した。飛行機は真夜中0時の出発である。3時間程の余裕があった。ラウンジでシャワーを浴び、ソフトドリンクなどを飲みながら開高健の「輝ける闇」を読んでいた。旅行中、空港やホテルの就寝前に読み続け、あと数ページを残すだけとなっていた。
小説は作者がベトナム戦争取材のため従軍し、激しい戦闘に巻き込まれながらも奇跡的に生還した経験をもとに書かれている。アメリカ人やベトナム人と触れ合いながら戦場の近くで安寧な日々を送っていたが、身近な人間が兵士として戦場に送られたことに触発され、自らも進んで戦場に行くことを決意する。ラウンジで読み始めたのはその最後の章である。どこからともなく弾が飛んでくる中、周りの兵士が次々と命を落としていく。ジャングルのどこに敵兵が潜んでいるのか分からない。泥の中に疲れ果てながらも前に進むしかない状況。ただただ生き残るために前に進むというシーンである。
読み終えた時には心地良い緊張感の中にいた。少し離れた席にTさんがいたが読み終えて目を上げた時にはいなくなっていた。妻も離れた席で休んでいた。しばらくして妻が時間の迫ったことを知らせに来た。
私「オッケー、行こうか」
立ち上がって目の前のテーブルを片付け、ジュースの缶などを捨てに行った。受付時間が迫っていた。ラウンジを出て長い通路を歩き急ぎ足で飛行機に乗り込んだ。機内で手荷物を上のボックスに収納し、ホッと席に着いた時だった。
私「忘れた!」
妻「何を?」
私「絵」
妻「えっ!」
洒落を言っている場合ではない。さっきまでいたJALのラウンジに忘れて来てしまったのである。絵は目の前のテーブルの横に立て掛けていた。到底取りに戻るような時間はない。
私「どうしよう……」
妻「諦めるしかないんじゃない?」
私「折角買ってきたのに……」
旅行の最後の最後にミスをしてしまった。あんなに頑張って手に入れたものをちょっとしたミスで手放すことになってしまった。
私「………」
頭の中で考えていた。出来ることは何だろう。取り戻す方法はないだろうか。空港の中で置き忘れたのなら兎も角、JALのラウンジの中である。誰かが持ち去るというような品物ではない。きっと、あそこにあるはずだ。あることは確かなのだ。それをどうやって取り戻すかだ。スチュワーデスに声を掛けた。
私「済みません。忘れ物をしてしまいました。問い合わせをしてもらえないでしょうか?」
                                 (平成29年作)

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処暑

洞窟を抜けて湖面に処暑の風



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食事のあとに向かったのが世界遺産に登録された「チャンアンクルーズ」である。「陸の桂林」とも呼ばれているらしいが、桂林に行ったことがないのでその凄さが分からない。石灰石で出来た奇岩の洞窟を潜りながら4,5人乗りの手漕ぎボートで奥へ奥へと進んでいくとパンフレットに書かれている。楽しそうである。
舟は小さく、船頭さん含め5人で満席である。ライフジャケットを渡され着るように言われた。それでなくても暑くてたまらないところなのでしばらく着ないでいると、後ろに座った船頭さんから背中を突かれた。ここは譲れないところらしい。女性の船頭さんである。ゆっくりと船出した。クルーズの始まりである。風もなく穏やかで波もない。このようなクルーズ日和がまたとあろうか。舟はただただ静かに湖面を進むだけである。私の前に座る男性が水に手を差し伸べ、湖面すれすれまで生えている藻を引き抜いた。無口ではあるが何事にも興味を持つタイプらしい。写真を撮ったりしている。帰ってくる舟とすれ違う。みなジャケットを脱いでいる。私も脱ごうとするとまた背中を突かれる。やはり着ていなければならないらしい。途中、7、8艘の舟が集まって何かをやっている。撮影のようである。振り向いて船頭さんに「あれは何か?」と身振りしてみると、我々夫婦を指さして笑っている。「何だろう、意味が分からない」近づいてようやく分かった。花嫁花婿の撮影である。結婚式用の記念写真を撮っているようである。なぜ我々夫婦を指さしたかは分からないが、船頭さんの笑顔が見られたので上出来である。スマホを自撮りモードに反転させ、船頭さんの顔を入れてみると大笑いしている。現地の言葉なので分からないが、きっと恥ずかしがっているのだろう。親密モードになったところでジャケットに手を掛けると、やはり駄目だと背中を突かれる。
随分と進んできてようやく洞窟が見えてきた。湖面スレスレと見える狭い入り口である。前を進む舟が入っていくので間違いない。あそこへ入っていくのだ。入り口が近づいてきた。本当に狭そうである。入った。いきなり頭をぶつけそうになる。鍾乳洞が垂れている。いやに狭い。洞窟の中には所々ライトがあり照らされているので岩の高さは確認出来る。油断しない限りは大丈夫のようだ。しかし安心は出来ない。一つ目の洞窟を抜け静かな湖面に出て二つ目の洞窟へと入っていく。抜け出て湖面を進み三つ目に潜っていく。随分と時間が経ったようだ。長い旅である。1時間は経過しただろうか。
「いやに長いクルーズですね。まさか、これで半分なんていうことはないでしょうね(笑)」
誰にともなく話しかけてみたが、しばらくして前に座っている女性が答えてくれた。
「まだ本当に半分くらいのようですよ。約2時間のコースと書かれていますから(笑)」
「ヒエー、凄いですねぇ。帰ってくる舟と出会わないところを見ると最後の出口まで洞窟が続いている訳だ。こりゃ、世界遺産になるのは当然だなぁ」
しばらくして船頭さんが背中を突いてきた。何だろうと振り向くとジャケットを脱げという。「えっ?」まだ終わっていないジャン。向こうに洞窟が見えているジャン。どうして?とは思いつつも速攻脱いだことはもちろんである。全部で8カ所の洞窟を通り抜け、見覚えの場所に出てきた。見応えのある2時間だった。
「ありがとう、最高だったよ。カムオン、バイバイ」
ハイさんからはチップ一人1ドルと言われていたが、少し多めに払って舟を下りたことはもちろんである。
                                 (平成29年作)

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朝涼

朝涼や白磁の皿に音立てて



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朝食はバイキングである。受付で部屋番号を言うとボーイさんが席まで案内してくれた。プールが見える窓際の席である。ここでいいかと聞いているのだろう。サンキューと言いながら席に着き、ここは覚え立てのカムオンだったと反省する。ベトナム語の「ありがとう」である。すぐに女性がやってきて聞いてきた。
「コピー?」
コピー?ああコーヒーね。発音が違うんだよね。
「サンキュー」
ああ、またサンキューと言ってしまった。この言葉しか思い浮かばないんだよね、日本人の私としては。妻が真向かいでクスッと笑っている。食後でもいいんだけどと思いながらも、淹れてくれたコーヒーを一口啜り、さて何を食べようかと考えた時、前の日に調べてきた「ベトナム料理ベスト10」のことを思い出した。手帳を見てみると1位はフォーである。まずはフォーだろう。どこにあるのだろう。女性に聞いてみた。「フォー?」すぐに案内してくれた。聞くまでもなくフォーは入り口のすぐ脇にあり、一番目立つ場所に置いてあった。やたら聞いてもいいことはない。よほどフォーが食べたかったのだろうと笑われてしまったかも知れないと思った。係の男性が麺を茹で器に入れたあと、何かを聞いてきているが何を聞かれているのかは分からない。ああ、どっちをトッピングするのかと聞いているようである。こっちと指を指すとなるほどそっちを載せてくれた。身振りだけでも通ずるいい例である。フォー(写真)の他にお粥やおかず、野菜などを持ってきて食べ始めた。美味しい。本当に美味しい。特にフォーは最高である。何杯でもいけそうな感じがする。さすがに第1位だけはあると納得した。
第2位はバインセオとある。「お好み焼き、レタスに包み食べる。ハーブがいい」とメモされている。どれだろう。2位なのだから無い訳がない。ウロウロして見てみたが見つからない。聞いてみた。
「バインセオ」
「???」
「バ、イ、ン、セ、オ」
「ノー」
聞かれた女性は遠く離れていってしまった。通じなかったのか、はたまた本当になかったのか。後々、ツアーで一緒だった女性に教えてもらったところ、今回の旅行ではバインセオには一度も出会わなかったそうである。彼女は観光としては初めてだが、仕事ではハノイに3回も来ているというベトナム通の人である。なんでそのバインセオが第2位と書かれていたのか、旅行を終えた今でも意味が分からないでいる。
                                 (平成29年作)

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暑さ

何としてでも生きていく暑さかな



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深夜に到着し、時差2時間を調整し、休んだと思う間もなく朝5時には起きていた。さすがにまだ辺りは暗かったが5時半を過ぎた頃から明るくなってきた。ホテルの周囲を歩いてみることにした。ホテルの9階から見える池はトゥーレ公園という。その池と周辺の町並みを歩いてみようと思ったのである。ホテルを出るとすでにオートバイが走っていた。まだ早朝である。勤め先に向かうのだろうが、二人乗り、三人乗り、大きな荷物を山盛りにしたバイクがクラクションを鳴らしながら走っている。夜中にも凄かったバイクが朝から走っているのである。休む間もなく活動する町である。
公園を目指して歩いていたが左側一体が工事中で柵がされていた。仕方なく公園を諦めて町並みに入ってみることにした。すでに店先には椅子を並べて食事をしている人がたくさんいた(写真)。椅子は風呂場で使うようなプラスチック製。大きな椅子では場所を取って邪魔になるかも知れないが、これは手軽なものである。尻を乗せるだけなので姿勢としては良くないが、その使い勝手は申し分なさそうである。ハノイの全ての店先に採用された椅子ということになる。
細い路地に入ると暗い中にも様々な店が動き出していた。野菜を刻んでいる店、肉を並べている店、揚げ物をしている店、朝から店先にしゃがんで煙草を吹かしている人もいる。独特な臭いがする。水を撒いたりしている。通りに出るといろいろな店が準備に忙しい。道に果物を並べ、早くもお客を待つ構えの人もいる。帽子屋もあれば仏壇屋もある。そこをバイクが勢いよく通り抜ける。いやはや、バイタリティーに富んだ町である。太極拳をしている人を見ながらゴックカイン湖の周囲を回りホテルに戻ったのがちょうど7時である。
「もう、早く帰って来てよね。朝食にも行かなければならないんだから」
「ちょっと待って。シャワーを浴びさせて」
「えっ、これから?」
「凄い汗なんだよ。歩いた途端に流れてくる。朝からこれだから日中は凄いことになると思うよ。心して行こう」
大急ぎでシャワーを浴びて、着ていたTシャツを水洗いし、準備が整った時には7時15分になっていた。
「もう……」
                                 (平成29年作)

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