ひこばえ
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馬鈴薯の花

馬鈴薯の花よ母ゐる故郷よ



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山から下りてすぐに朝食である。32階にあるレストランに出掛けた。バイキングである。窓際に席を取って好きなものを運んでくるのだが、私は決まって和食である。ご飯と味噌汁と納豆さえあればいい方である。さっさと運んできてみんなが揃うのを待っていた。娘は食べたいものがあるという。前もって調べてきたらしい。フレンチトーストである。
「今、焼いてくれてるんだけど、焼けるとすぐに他の人が持って行ってしまうので、なかなか回って来ないのよねぇ」と文句を言っている。
「そんなに美味いものなの?」
「この前、テレビでやっていたんだけど、とても美味しいと言っていた」
「そうなの?取って来てやろうか?」
「よろしく」
行ってみるとなるほどコックさんが一人で焼いている。焼き始めたばかりなので時間が掛かるという。コックさんに話しかけてみた。
「相当に時間が掛かりそうだねぇ」
「いえ、すぐですよ。しかし、並んで待っていただくのはお遠慮いただいております」
「そうなの?それじゃ、タイミングが悪いといつまで経っても食べられないね」
「すぐに焼き上がりますのでお待ちいただきたいのですが……」
見ていられるのがいやらしい。
2回、3回と見に行って娘がようやくもらってきた。普通の食パンのようにも見える。
「厚切りなのに中まで卵黄がしっかり浸み込んでいてフワフワに焼けている。すごく美味しい。これを食べないではトマムを語れない」
「ええっ……」
雲海も見られず、フレンチトーストも食べず……。

帰りは歌志内まで私が運転した。実家で仏様を拝んだあと、母に見送られて出発した。
「身体、気を付けてね」
「ありがと。お前もあんまり無理するんじゃないよ」
いつも目頭が熱くなる別れのシーンである。
千歳までは交代して娘が運転した。熱いので車内のクーラーは強目にしている。ついウトウトとし、途中から爆睡してしまった。朝が早かったのだから眠たくなるのは当然である。目が覚めた瞬間、風邪を引いたと思った。寒気がする。熱っぽい。咽喉が痛いような気もしてくる。<やってしまったなぁ>お茶をガバガバと飲み始めた。出来ることは水分補給しか思い浮かばない。
「風邪引いちゃったよ。昨日の夜はこうならないようにとパーカーまで買い込んだのに、まさか昼間の車の中で引いてしまうとはウッカリだったよなぁ」
誰一人、同情してくれる人はいない(トホホ)。
                                 (平成30年作)




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雲海

雲海を待つ雨雲の中にゐて



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そういう時の早起きは目覚まし時計などなくても大丈夫である。きっちりと3時半に起き出して買ったばかりのパーカーなど着込んで準備万端である。娘も4時前には起きてきた。ロビー4時10分集合なので5分前に到着したが、すでに長蛇の列が出来ていた。ホテルに泊まった全員が集まったのではないだろうかと疑うほどの人数である。時間になるとバスが次々とやってきた。3台目のバスに乗り込んだ。リフト乗り場までは5分ほどである。他の棟のお客もいるので乗り場はごった返していた。勢いよくリフトが回ってくるので進みはするが、早朝からの順番待ちはかったるい。「雲海を見せて商売にしよう」と最初に言い出した人の発想力に敬意を表する。順番待ちをしていると「本日この時間、雲海は出ておりません」とアナウンスされた。それと同時に「山頂には雨雲が懸かっていて、霧雨のような雨が降っています」という情報である。それでも誰一人として帰る人はいない。列の進むのに任せ、次々とリフトに乗り込んでいく。
「雨雲かぁ」
<雲海と雨雲とは違うものだろうか。雨雲を上から見たら雲海というのではないだろうか。それとも雲海とは雨を降らさない雲を言うのだろうか>調べる間もなく、そんなことを考えながら順番を待っていた。4人掛けのリフトに見知らぬアベックと向かい合わせに座り、妙に気まずい10分間を過ごしながら頂上に到着した。アナウンス通りに雨が降っていて雲海は見られない(写真)。備え付けの青い雨具を借りて、しばらく様子を眺めていた。
私「一句出来た!『雲海を待つ雨雲の中にいて』。どう、分かる?」
娘「分かるけど、何だかダジャレみたい。そのままのことじゃない(笑)」
私「まぁ、なぁ……」
しばらくテラスにいて天候の変化を待っていたが、すぐには変わりそうにないので周囲を歩いてみることにした。
山頂登山道という道があったので登り始めたが、すぐに後悔した。<朝からこれは心臓に悪い>である。息が切れそうになり、戻ろうかと思ったところで「クラウドプール」という遊具に到達した。雨雲も去り、遠くの山に懸かる雲海らしきものが見える。眼下に迫る雲海ではないがこれもまた良しである。娘と二人でクラウドプールの上で写真を撮り、空中散歩を楽しんだ。
                                 (平成30年作)




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成吉思汗鍋

成吉思汗鍋を囲めば蝦夷思ほゆ



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夜はジンギスカンを食べに行った。北海道に来てジンギスカンを食べないで帰るのは東京見物に来て東京タワーを見ないで帰るのと同じだという意見に娘が同意した。混雑しているという情報もあったが、意外とスンナリと入れて手際よく料理も運ばれてきた。
「ウメー!」
カズ君もご満悦である。
食べながら話は「雲海」に及んだ。何と言ってもトマムと言えば雲海である。前日、富良野で十勝連山に懸かる雲海を見ているので、あれが明朝トマムの山に懸かればいいだけの話である。何となくその気になっている。雲海発生確率が発表され、翌日は30%だという。
私「30%とは低いなぁ。見られないかなぁ」
妻「行くの?」
私「行くよ。トマムに来て雲海の句を作らなかったら何しに来たか分からないよ」
ボーイさんが来たので聞いてみた。
私「明日、雲海は見られそうですかね?」
ボーイ「どうですかね。あまり見たという話は聞きませんからねぇ」
私「そうなの?明日の確率は30%という発表だから見られるんじゃないの?」
ボーイ「発生確率はいつも30%です。それ以外の発表は見たことがありません」
全員「えっー!」
娘が行くと言い始めた。
私「おっ、行こうよ」
娘「ロビーに4時10分に集合だよ。起きられるかなぁ」
私「大丈夫、大丈夫。3時半には起こすよ」
娘「いやいや、そんなに早くなくても大丈夫。4時でお願いします(笑)」
その後、防寒着の話になった。
私「夏とは言っても相当に寒いだろうなぁ。長袖は持って来てないよなぁ」
妻「持って来てない。薄手のジャケットがあるだけ」
私「買おう。食べ終わったら買いに行こう」
8時を回っていたので専門店は閉まっていた。わずかに一軒だけがパーカーを扱っていた。
娘「わー、高いなぁ。もったいない」
私「いいよ、風邪引くことを考えたら安いもんだよ。トマムって書いているパーカーだけはやめておこう(笑)」
娘「そうだね」
カズ君「ソダネー」
                                 (平成30年作)




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夏山

夏山が囲む壺中の天に入る



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星野リゾート「トマム」のチェックインは3時からである。富良野から車を走らせて途中どこかで食事をしようと思ったが適当な場所が見つからず、そのままホテルに到着してしまった。まだ1時である。<いくら何でも早過ぎる>と思ったが、周囲に何もないのだから仕方ない。部屋に入れなくても荷物だけ預かってもらってどこかへ食事に行こうということになった。到着したのがトマム・ザ・タワーである(写真)。荷物を下ろし家族を下ろして少し離れた駐車場に到着したところで娘から電話が入った。このタワーではないという。再び戻って荷物を積み込み、向かったのが隣に建っているリゾナーレ・トマムである。似たようなタワーが2棟並んでいた。いずれにしてもチェックインは出来ないだろうと思っていたが、話をするとすぐに入れるように手続きしてくれるという。さすが星野リゾートである。いやな思いをさせない心配りは徹底している。部屋に入って驚いた。広い。寝室が2部屋。ジェットバス、シャワールーム、サウナ完備。それがまたオシャレである。
「スゲェー!」
荷物を置いたあと、まずは何か食べに行くことにした。食べる場所はいろいろあるようだが、散歩がてら探検してみようとトマム・ザ・タワーの方へ歩いてみることにした。車で2,3分の感覚だったが連絡通路の長さには驚いてしまった。しかも暑い。通路内がサウナ状態になっている。北海道にしては暑い日だったのかも知れない。お腹が空いていたためか相当に草臥れてしまった。辿り着いた店が変わっていた。「エビとアボガドのタルタル」「ソフトシェルクラブのスパイシーフリット」「カニいくら丼」「カリフォルニアロール」「海老の天ぷら」などを注文していたが、私にはいまだに何の店だったかよく分からない。
そのあと、バスで移動して世界最大級という大型プールに入ってきた。大波が寄せてくる中で久し振りにビーチバレーなどして遊んだ。ボールを取ろうと身体を横に跳ばしたあとの水中での無音はとても懐かしいものだった。部屋に戻ってベッドに横たわると瞬時に寝に落ちたものだった。
「1泊だけじゃもったいない。3泊はしたい!」の声が聞こえてきた。
(注)「壺中の天」薬売りの老人が市場での仕事を終えると店先に吊された薬壺の中に入っていく。頼んで一緒に入れてもらうとそこには立派な御殿が建ち、美酒佳肴が用意された極楽の地であったという中国の故事。
                                 (平成30年作)




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夏嶺

向き合つて夏嶺と交はす酒一献



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朝9時には「チロルの湯」を出て母を迎えに行ったが、あれやこれやとやることがあるらしく家を出たのは正午近くになっていた。「まずは昼飯をどこかで食べよう」ということになり、車を走らせてしばらく行った芦別のレストランに入ることになった。ポスターに「星の降る里」とあった。「どうして芦別が?」と思ったが、町おこしに懸命なのだろう。子供達が小さかった頃に来たカナディアンワールド「赤毛のアンの家」も芦別だった。誰も居ない広大なテーマパークを我々だけで歩いたことを昨日のことのように思い出す。芦別から富良野は相当に遠いイメージだったが、走ってみればそれ程でもなく、3時前にはホテルに到着していた。新富良野プリンスホテルである。部屋からは十勝岳連山が見えた(写真)。
「おお、雄大だなぁ!」
雲が懸かっていて全景だけを写すことが出来ない。そのうち、流れていくだろうと待っていたが、ほとんど動くことなく棚引いている。周囲の雲はどんどん流れていくのだがあの雲だけは動かない。風呂に行って戻ってきても変わらず、12階にある和食レストランに行っても同じである。ボーイさんが自慢していた。
「この景色に勝る風景はありません。北海道のどんな有名な景色もこの雄大さには敵わないと思います。特にいいのが雪を被った冬の景色とこれからの夏の景色です。今日は雲が懸かっていますが、雲のない青空の下の連山に感動しない人はいません」
「随分と売り込むねぇ(笑)。そんな風に言われると一度は見てみたい気がするよ。明日の天気はどうだろう?」
「お客さま、明日の天気は分かりませんが、もし見られなかったとしても大丈夫です。何度もお越しいただければいいだけですから、次回もお待ちしております」
調子のいいボーイさんだと思った。我々の席には一度しか来なかった。私の頼んだお銚子を運んできてくれた時だが、そう言えばあの時、私のお猪口にお酌までしてくれたのを今思い出した。

日が落ちてからホテルの横にある「ニングルテラス」という場所に出掛けた。森の中に出来たショッピングエリアで一つ一つの店がログハウスになっていて木の通路で繋がっている。木彫り細工や革製品、ガラス、紙、銀細工などの店が15、6軒並んでいて、どの店もずっと見ていたくなるような楽しさである。通路は灯が点されているが、やはり暗い。母の手を引いて歩いてくれたのが妻である。部屋に戻ってから母がしみじみとそのことを話していた。
「いやぁ、ずっとみどりちゃんが手を引いて歩いてくれたぁ。一番嬉しかったぁ。離れて暮らしていると人の心が分からなくなる時ってあるもんだぁ。なんぼ電話で話したって分からなくなる時ってあるもんださ。今日は分かったぁ。ほんとに心優しい子だぁ。嬉しかったぁ……お前、余計なこと、またブログさ書くなよ。こんなこと言ってたなんて書いたら駄目だからね」
                                 (平成30年作)




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